試験-17th-夢と現実・溶け合う時間・混ざり合う思い
センター試験の当日朝、起きたのは朝の6時。
部屋の床板からも冷気が伝わってくる。
無心でストーブをつけて、言葉少なめに朝食を取る。
母がコンビニでサンドウィッチを買ってきてくれたらしく、感謝して受け取り家を出る準備をする。
玄関を出る時に、父がこういった。
「ケイ。背が伸びたか。」
試験会場は、少し離れた大学で行われため、そこまで自転車で向かう。
自転車に乗ってすぐ、ipodを取り出し、音楽をかけた。
「曲をシャッフル」を選択する。
流れた曲はsigur rosだった。
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sigur rosは、ipodで何度も再生しては今を感じて、未来をイメージする時に聴いてきた。
このBGMを聴きながら朝の寒い風の中を突っ切っていく。ペダルを踏む度に高校3年の思い出が再生されてくる。
この高校3年という期間は、ある意味、現実の中にいながら夢を見る。
そして、夢の中にはいつか必ず現実が訪れる。
誰もが制限無き夢を描くことができ、その終りに受け入れるべき現実が用意されている。
夢と現実は混ざり合い、溶け合いながら、忘れえぬ時間を創り出す。それは、後の人生で重ねる老いの度に鮮やかさを極めていく。
白昼夢は見える世界を変え、真夜中に描く夢は現実をも変えていった。
現実と夢は死の間際にも混ざり合い、完全な分離ができないその空間は、宿主に一つの物語を見せる。
赤信号で自転車を止める。
今日のバッグは軽い。たいして参考書も詰め込まなかった。
もらったギフトは家に置いてきた。センター会場に持って行こうかとも考えたが、でもそれは最初だけ。自然と家に置いて行く気持ちになれた。
今までで何度もギフトからモチベーションをもらい、その中にいろんなものを詰めた。だから立ち向かうべき場所へは、自身に詰め込んだものだけを持って行く。
それが目に見えないとしても。
会場に着き、心なしか重くなったバッグを持ち上げ、中に入る。
試験が始まる。
不思議と緊張はしなかった。
『すべての始まりには終わりがあり、その終わりには始まりがある』
sigur ros