病室にいる限りは外野の騒音が聞こえては来ない。
兄にはバラしちゃったし、父にはナイショになったし、職場のボスにもしゃべっちゃったし。 本人はすでに肩の荷を降ろしちゃった気でいたのだが。
いざ家に帰ることになると外野が騒がしい。 友人には話をしてあったが、その家族がヤイヤイ言ってるらしい。 友人の父母、おじちゃん、おばちゃん、いとこ、その子供もろもろ殆ど顔見知りなので、顔をあわせる度に、「何がどうなってるんだ?」と突かれているらしい。
そんな訳で仕方なく、どうはぐらかすか作戦の会議となった。
医師、看護士、ケアマネージャーまでそろって秘密の相談。 全く存在しない病名をでっち上げて、誰かがネットで調べたりしたらおしまいだし、例えば肝炎とかメジャーなとこでウソを教えたら、今度は「肝炎には〇〇が効くのよ」とか「このサプリを飲んだら治るわよ」とか医学的根拠がなくても、本気でお節介やく人達なのだ。
ほんと言うとズバリしゃべったら楽だろうにと思うが、HIVとエイズの区別も分らない人が多いのに、あの年頃のおばちゃん達にエイズなんて言ったら、とんでもないことになる、まちがいない。
明確な答えなんかないから話がグルグル回るだけで、私本人は実はこの件に興味がない。 うちの家族ではなんでもやっちゃったもの勝ちで、説明はいらないし、後から非難されたり追求されたりはないもんで。 人のことにやぁやぁ言う心理が分らない。 友人の家族とは全くの他人だし。
どっちにしても友人がウザイ思いをするだけで、私に面と向かって言うのはないだろう。 我慢してもらおう。 それくらいに興味がない。 外野に付き合ってやるなんて無駄だ。
いい大人がこんな不毛な会議をするってどう、と思うが、そう珍しいことではないそうだ。 過去の患者さんの時にもいろいろウソつきました、なんて聞かされた。
肝炎や白血病なら多分隠さないだろうに。 癌なら、痔なら、淋病なら、どこまで笑って言える?
HIVはやばいよな。 エイズはアウトかも。