新・人間革命 第1巻 
開拓者 336ページ

 壮年の一人が、伸一に尋ねた。
 「私には、人に信心を教えるような経験も、実力もありません。これから、支部の幹部として、みんなから相談をもちかけられた場合、どうすればよいでしょうか」
 真摯な質問であった。伸一は微笑んだ。
 「経験は、これから積めばいいんです。学会は 指導主義 です。指導は、教授とは違う。自分が習得したものを人に教えるのが教授ですが、指導というのは、進むべき道を指し示し、ともに進んでいくことです。したがって、御書にはこう仰せである、学会ではこう教えていると、語っていけばいいんです。そして、一緒に、その人の幸せを祈ってあげることです。これは、誰にでもできることだが、人間として最も尊い行為です。自分のために、祈ってくれる同志がいるということほど、心強いことはありません。それが、最大の力になり、激励になります。また、これからアメリカには、日本から幹部を派遣しますから、わからないことは、その人に率直に聞いてください。リーダーとして、大切なことは求道心です」
 伸一は、幹部の基本を、諄々と話していった。