宮部みゆきさんの中編集『鳩笛草』を読みました。
収録されているのは、
- 朽ちてゆくまで
- 燔祭(はんさい)
- 鳩笛草
の3編です。
「朽ちてゆくまで」
主人公は力を持つ女性。
その力は便利なものでも幸せをもたらすものでもなく、むしろ重荷のようなもの。
読んでいて印象的だったのは、力に翻弄されながらも「せめて誰かと分かり合いたい」と思う場面です。
例えば、友人に「私、普通じゃないんだ」とぽつりと打ち明けるシーン。
その瞬間の戸惑いや不安、そして小さな勇気が、読んでいるこちらにも伝わってきて、胸がじんわり温かくなります。
「燔祭(はんさい)」
青木淳子という少女の話。
発火能力を持つことで、仲間と距離を感じたり、孤独を抱えたり。
教室で「どうして私だけ…?」とつぶやく淳子の姿は、力を持つことの孤独を象徴していて切なくなります。
でも、ただ孤独なだけじゃなく、誰かとつながろうとする小さな希望も描かれていて、読んでいて胸がぎゅっとなる場面が多いです。
そしてこの作品は長編『クロスファイア』につながる原点。
燔祭を読んでからクロスファイアを読むと、淳子の成長や力の使い方がより深く理解でき、物語全体のテーマの重みを感じられます。
「鳩笛草」
最後は表題作。
人と人の心の通い合いを描いた物語です。
特に印象的だったのは、日常の中でのちょっとした会話や触れ合いの中に、力を持つことで見える世界と、人間の優しさ・孤独が交差する瞬間が描かれていること。
「特別な力がなくても、心の通じ合いは大事なんだな」と、ほっとする余韻を残してくれます。
3編に共通するテーマは、“力を持つことの孤独”と“それでも生きていく人の強さ”。
特に「燔祭」を読むと、クロスファイアまで意識できて、物語の広がりを楽しめます。
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