水中カメラマンからの警告 | オールドキャンパーの独り言

オールドキャンパーの独り言

退職後JICA海外シニアボランテイアとしてアルゼンチン1年、カンボジアで2年過ごし、帰国後、長野県の生坂村に引っ越ししてきました。中学生時代からのキャンプ生活で身につけた知識技術が現在の暮らしに活きています。


 これもずいぶん前のことになりますが。NHKのテレビ番組でフリー水中写真家中村征夫氏の紹介がありました。

 海の魅力と環境問題を伝え続けている彼が、30年間撮り続けている東京湾の水中写真の話に感激しました。

 彼が、最初にお台場に潜った時には、東京湾は汚れていて視界もゼロに近かったそうです。そんな海の中で、マスクに何かが当たったので思わずシャッターを押した時の写真には、たくさんの卵を抱えた小さなカニが写っていたのだそうです。

 汚れた海でもたくましく生きるカニの姿に感動した彼は、その後も何度か同じ海に潜ったのだそうです。そんなある日、「少しでも綺麗なところで産卵が出来、子孫を残すことが出来るように」という想いから、卵をいっぱい抱えたカニを数匹捕まえて、静岡まで運んで防波堤から海に投げ込んでやったのだと言います。しかし、防波堤からカニを投げ込んだ時に、彼はハッと気がついたのだそうです。「思いっきり投げ込まれたカニたちは、ポチャン、ポチャンと音を立てて海に落ちていったのだが、その音で集まった魚たちが、沈んでいくカニの卵を食べてしまったのではないのだろうか。自分は何という思い上がったことをしてしまったのだろうか。自然の摂理を無視した偽善者であったのだろうか」と・・・。

 そして、その時から彼は、海に対する知識、生物に対する正しい知識なしでは、海に生きる生物の真実の生き様を撮ることは出来ないと考え、勉強を続けているのだということでした。