「AO入試」を採用する大学が国公私立を問わず急増し、いち早く高校生を囲い込もうという動きが強まっている。高校3年の1学期にあたる5月末に合格を出すことを表明したり、選抜の途中で合格の「内定」を出す私立大も現れた。急激な少子化を背景とする「青田買い」の過熱に、高校側は「生徒が学校で勉強しなくなる」と神経をとがらせている。

 AO入試は、大学が受験生の自己推薦を募り、面接や小論文で選抜する。高校長が日ごろの成績を基に生徒を推す従来の推薦入試に比べ、人物重視の選抜方式とされる。本家米国では多くの大学が早くから取り入れ、日本では慶応大が90年度初めて実施。導入する大学は増え続けている。

 推薦入試では願書の受け付けを11月1日以降とする文部科学省のルールがある。しかし、AO入試に縛りはなく、多くの大学は夏ごろから受け付けを開始する。

 昨年、福岡県太宰府市の第一経済大では、5月末に合格を出すという触れ込みでAO入試の受験生を募った。しかし、応募者はなく、今年は合格発表を7月末に設定する見通し。

 また、愛知県美浜町の日本福祉大は先月受け付けを開始(合格発表は10月)。岐阜県大垣市の岐阜経済大は今月15日から開始する(同11月)。愛知県岡崎市の愛知産業大は、出願前の面談で合格に当たる「出願許可書」(内定)を出す。

 AO入試の広がりについて、大手予備校の担当者は「中には『来れば内定、会えば内定』という大学もある」と明かす。大学見学や面談に訪れた受験生を軒並み合格させるという意味で、選抜の質を疑問視する。夏休み前に進路を決める生徒も増え、進路担当の都立高教諭(39)は「生徒が楽な方へ流れ、勉強しなくなる」と嘆く。

 推薦入試でも80年代後半、大学がいかに早く合格を出すかを競い合い、当時の文部省が95年度から「11月1日」の縛りを設けた経緯がある。【高山純二】