こんばんは。

ご覧頂きありがとうございます😊

 

本日も想像力と今昔まんがまつりというテーマで

 

犬王(2021)

 

という映画を解説してみたいと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします。

 

★"今昔まんがまつり"とは?

近年発表されるアニメーション映画の本数は膨大なものとなり、すべてのアニメーション映画を閲覧する事は不可能な時代へと突入しています。

 

推しのアニメを一生見続けられるというのは幸せな事ではないかと思いますが、その一方で、自分が知らないアニメと出会うための時間を作るのは、簡単な事ではなくなりつつあるのではないでしょうか?

 

本シリーズはそんなアニメの百花繚乱時代において、かつて日本に存在していた「東映まんがまつり」や「東宝チャンピオンまつり」のような、雑多なアニメが一挙に上映されるようなイベントがもし存在したとしたら、どんな効果があるかをシミュレーションしてみようという夏休み企画!

なんとなく立ち寄った古本屋さんに素敵な本が見つかったり、何気なく観に行った3本立ての名画座で、大好きな作品巡り合えるような、そんな偶然をご提供できればと思っております😊
 

 

↑本シリーズの概要はコチラ!

 
 
どんな作品?

 

本作は2021年に公開された湯浅正明監督によるアニメーション映画。

 

湯浅正明監督と言えば、人体を自由自在に動かす事ができる天才的なアニメーター監督!!

 

人体自由自在の湯浅正明監督!!

(「MINDGAME」より)

 

 

そんな湯浅正明監督の最新作は、室町時代に実在していた謎多き能楽師を映像化した伝記ロマンのような作品!

 

風流歌舞を得意とする申楽(猿楽)の名手として人々から人気を博していたと記される犬王ですが、観阿弥・世阿弥と人気を二分していたにも関わらず、現存している曲は1つもありません…

 

 

本作はそんな犬王と、盟友の琵琶法師の友魚(ともな)を描いた作品なのです。

 

室町時代に実在していた

能楽師の奏でた散逸した音楽とは!?

 

 

 

アバウトなストーリー 

 

「キネマ旬報社」さんのデータベースによれば本作の解説は以下の通り。

 

国内外で高い人気と評価を得る、湯浅政明監督の最新作。

脚本に野木亜紀子、キャラクター原案に松本大洋、音楽に大友良英という夢のコラボが実現。

変幻自在のイマジネーションが炸裂する“狂騒のミュージカル・アニメーション”。

原作は歴史に隠された能楽師=ポップスターの犬王を大胆不敵な解釈で捉えなおした古川日出男の著書『平家物語 犬王の巻』(河出文庫刊)。

カリスマ性と歌唱力、そして野心を抱く主人公・犬王を人気バンド「女王蜂」のボーカル担当・アヴちゃん、その相棒となる琵琶法師・友魚(ともな)を実力派俳優・森山未來が演じ、サクセスストーリーにして、切ない友情の物語が展開する。

ヒップホップやロックが入り混じり、歓喜する民衆のイメージの洪水はまるで狂熱の野外フェスのよう。

2021年・第78回ヴェネチア国際映画祭オリゾンティ・コンペティション部門のプレミア上映では “ロックオペラ”と評された。
 

 

 

 

 

おお。

 

ロックオペラと言えば「ファントム・オブ・パラダイス」が有名ですよね!!

 

偉業の怪人ファントムが奏でる
至高のロックを描いた
ファントム・オブ・パラダイス!
 
 
そしてロックオペラと称される本作に登場する犬王は、確かにファントムに近い境遇の人物として描かれているのです!!
 
ファントムと同様、
仮面をかぶっている犬王。
 

 

 

そんな本作の冒頭のストーリーは以下の通り 。

 

① 本作の舞台は室町時代初期。南北朝を統一を目指すための旗印として三種の神器を必要としていた三代将軍足利義満は、壇之浦の合戦の際に平家と共に海へと沈んだ天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)を探し出すために、壇ノ浦の漁師に海に潜って宝剣を探すよう依頼します。

 

高額の報酬を提示された漁師は

息子の友魚(ともな)に促されるように

宝剣探しを承諾します。

 

 

② 海底を捜索した漁師と友魚は、天叢雲剣の入った木箱を発見しますが、箱の中の剣を取り出した瞬間、平家の呪いによって友魚の父親は横真っ二つに切り裂かれ、友魚も両目の視力を失ってしまいます。恐れをなした義光の部下は逃亡してしまい、一家の大黒柱を失った友魚の家は崩壊してしまい、友魚は父親の仇を探すために旅に出ます。

 

音とぼんやりとした光の明滅しか

感じる事ができなくなってしまった友魚は

敵討ちのために放浪の旅へ

 

 

③ 旅の途中に友魚は、琵琶の音に合わせて共に故郷壇之浦で起こった平家滅亡の話をする声を耳にして驚き、歌い手にどうして自分の故郷の話を知っているのかを訪ねます。歌っていた琵琶法師の谷一は、自分は琵琶法師で、目の見えない琵琶法師の仕事は平家物語を歌う事だと教えられ、友魚は谷一に弟子入りし、故郷の壇ノ浦で起こった悲劇を歌う琵琶法師への道を歩み始めます。

 

目の見えない友魚は、

琵琶法師の歌に聴いた時に

壇ノ浦の風景が見えて驚きます!

歌ってスゴイ!!!

 

 

④ 谷一と行脚の旅を続けていた友魚は、平家の悲劇にはまだ知られていない話が多く存在するが、最近、そんな秘話を知っている琵琶法師が次々と殺されているという噂を耳にしますが、友魚の心の中には、そんな未知の話を自分で歌にしてみたいという想いが沸き上がり始めていたのです…

 

俺も自分の琵琶で、平家の物語を

音楽に乗せて歌いたい!

 

 

ん?

 

犬王がちっとも出てこないんですが?

 

 

 

さて、そんなソウルを持っていた友魚と知り合う事になる犬王とは、果たしてどんな人間だったのでしょうか?

 

それは是非、皆さん自身の目でご覧になって頂ければと思います。

 

ネタバレにならないよう

犬王についての言及は

差し控えさせて頂きますが

初めて友魚が犬王の声を聴いた時

心に思い浮かんだのは

人間とは思えないピンクの球体!

果たして犬王の姿とは!?

 

 

 

【選ばせて頂いた理由】エコール・ド・パリの水滸伝

 

皆様がご覧になる楽しみを奪わないよう、これ以上詳細を書く事は差し控えさせて頂きますが、本作を選ばせて頂いた理由は以下の3つ。

 

選ばせて頂いた理由① 歌に魂を載せる

 

ここまでの解説でご理解頂けると思いますが、目が見えない友魚は、谷一の琵琶を聴いた事で、平家の悲劇をイメージできた男。ですので友魚は、メッセージ性のある歌には魂が宿る事を直感で理解できた男であり、琵琶法師になった理由も、自分もメッセージ性の強い歌を歌って、人々の心を揺り動かしたいと考えたのだと考えられます。

 

そう。

 

歌で世界を変えるというのは、1960年代のロックが目指していた真骨頂!!

 

そんな友魚が犬王の舞と共に歌った歌は、間違いなくロックであり、それまでの能楽師たちの奏法とは全く異なったソウルフルなものとなっているのです!

 

観阿弥の能楽は上流階級に好まれる

クラシックのような風雅なもの。

 

一方の友魚の生み出した能楽は

観客の魂をゆさぶる

ソウルフルなものでした!

 

 

選ばせて頂いた理由② 日本語ロックの魅力

 

そんな本作で友魚が歌うのは、能楽の歌い方をハード・ロックのテイストで脚色してゆくセンス・オブ・ワンダーなもの!

 

と、このうに解説すると「日本語ロックって、なんかダサい」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、実は一つ一つの単語が明瞭な日本語は、メッセージを伝えるのに適した言語であり、ロックやヒップホップなどのソウルフルな音楽とは相性抜群であり、本作で歌われる友魚の歌も、観客を忘我の境地に誘うような魅力的なものに仕上がっており、本作は日本語によるロックの魅力を理解できる作品にも仕上がっているのです😆

 

 

日本語ロックのカッコよさの例

原曲は「Budgie」の「Breadfan」という曲。

 

そんな「Breadfan」のカバーである

「人間椅子」の「針の山」という曲は

日本語ロックの真骨頂!!

 

本作は、そんな日本語ロックの魅力を

世界の人々に伝えていける作品なのです!

 

 

選ばせて頂いた理由③ 名前を語り継ぐべき理由

 

私見ですがそんな本作に込められたもう一つの重要なメッセージは、「名前を語り継ぐ」事の大切さ!!

 

これは「リメンバー・ミー」という映画でも語られていますが、どんなに偉大な功績を残した人でも、名前を憶えてもらえなければやがては存在すら忘れ去られてしまうものであり、本作は、既に現代人の日本人が誰一人認識できなくなってしまった犬王という実在した能楽師への鎮魂の映画であると共に、全てのクリエイターたちの作品が語り継がれていくべきだという監督の想いがが込められた作品となっていると思うのですが、皆様はどう思われますでしょうか?

 

法師としての名を挙げた友魚は

琵琶法師の頭領の覚一から

一の字をもらって

友一と名乗るよう命じられますが

死んだ友魚の亡霊は

「名前を変えてはいけない!」と

友魚に厳命します!

名前を忘れられてしまえば

業績も無に帰してしまうのです…

 

 

 

 

 

 

という訳で次回は

 

「センス・オブ・ワンダー」今昔まんがまつり⑥

 

というテーマで

 

スキャナー・ダークリー

 

という映画を解説してみたいと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします😘

 

 

 

ではまた(*゜▽゜ノノ゛☆

 

★おまけ★

併せて観たいロックな湯浅正明監督の映画
「夜明け告げるルーのうた」

 

 

大きな崖の陰になっている

日の当たらない小さな漁港の町。
 

そんな本作の主人公カイは、

日の目を見ない人々が集う町に住む、

才能があるのに表舞台に出る事を

極度に恐れている少年

 

劇中ではハッキリと描かれない

少年の想いが理解できた時、

自分には天賦の才能がないと

自覚した少年が歌う

心を込めた歌に観客は涙するのです…

 

上手い下手ではない、

歌の力を映像化した本シーンは

日本語が分からない外国の方も

涙させているのです😭