こんばんは。

ご覧頂きありがとうございます😊

 

本日も想像力と発掘良品の発掘⑰というテーマで

 

かくも長き不在(1960)

(原題:UNE AUSSI LONGUE ABSENCE)

 

という映画を解説してみたいと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします。

 

★発掘良品の発掘とは?

発掘良品とは、惜しまれながらも2022年3月に終了を迎えた、TSUTAYAさんによる新作・旧作、有名・無名、公開・未公開ではなく「面白い」を基準に作品をセレクトし、毎月紹介してくれている映画ファンたのための素晴らしいシリーズ。

本シリーズは、そんな発掘良品の全作品を5~6年かけてご紹介させて頂こうという超長期目標のシリーズとなっております😄

 

 

 

 

驚くほど美しいモノクロ作品!

 

本作は1960年に公開されたフランス映画。

 

本作を撮られたアンリ・コルピ監督は寡作な方であり、長編映画は2作品しか残されていらっしゃいません。

 

もう1作のアンリ・コルピ監督の長編

「ミステリー島探検/地底人間の謎」は

TVシリーズの劇場用再編集版!

 

メッチャ面白そうな雰囲気の日本版ポスター!

残念ながら未DVD化作品ですあせる

 

 

本作は、そんな知る人ぞ知るアンリ・コルピ監督作品の美的センスに圧倒される、人生で一度は観ておいて損はない驚くほど美しいモノクロ作品なのです!!!

 

レコードがジュークボックスに

セットされるだけなのに、こんなに美麗!!

 

 

 

アバウトなストーリー 

 

「キネマ旬報社」さんのデータベースによれば本作の解説は以下の通り。

 

「雨のしのび逢い(1960)」のコンビ、マルグリット・デュラス、ジェラール・ジャルロのシナリオをアンリ・コルピが演出したロマンチック・ドラマ。

撮影は「OSSと呼ばれる男」のマルセル・ウェイス、音楽はジョルジュ・ドルリューが担当した。

出演は「顔のない眼」のアリダ・ヴァリ、「めんどりの肉」のジョルジュ・ウィルソン、ほかにジャック・アルダン、ディアナ・レプヴリエ、カトリーヌ・フォントネーなど。なお、六一年度ルイ・デリュック賞、同年カンヌ映画祭グランプリを受賞している。

黒白・ディアリスコープ。

 

 

 

ん?

 
ロマンチック・ドラマ??
 
 
本作をロマンチック・ドラマと考えるかどうかは意見の分かれる所ではないかと思いますが、本作に恋愛要素がある事は間違いありません😊
 
 
 
本作の主人公のテレーズは、セーヌ川近くでカフェを経営している女性。
 
従業員の女の子と2人で運営しているテレーズのカフェは観光客相手の店ではなく、地域の人たちが気軽に立ち寄れるような気さくなお店です。
 
テレーズの店は常連たちの憩いの場!
 
 
ずっと独り身を通して来たテレーズでしたが、最近ピエールという男性と恋仲になり、今度の休みには2人でバカンスに行く約束も交わします。
 
手前の実像も、鏡に映った2人も幸せそうラブラブ
これはすごいカメラワークです!
 
 
…良かったですねテレーズ😉
 
ですがピエールと旅行の約束をしてしばらくして、記憶喪失のホームレスが店の前を毎日行き来するようになると、テレーズは周囲の人たちに「あのホームレスが怖い」と言い始めます。
 
 
 
テレーズがホームレスを怖がる理由は、不審な行動をとっているから?
 
 
 
いいえ。
 
ホームレスは毎日店の前をオペラの「セビリアの理髪師」の曲を歌いながら往復しているだけ!
 
彼はテレーズに見向きもしませんので、怖がる理由が見当たりません。
 
警察が怖いらしいホームレスですが
何をする訳でもありません。
 
テレーズとは眼も合わせませんので
別に怖くないですね汗
 
 
ですが、ホームレスを怖がっているはずのテレーズは、ある日彼が店に近づいて来た時に、ビールをおごるから店に立ち寄って欲しいと言うよう、店員の女の子に命じたのです!
 
「あなた、あの人に声をかけて店に連れて来て」
 
 
 
 
んんん。
 
どうしてテレーズは、怖がっているはずのホームレスを店に招き入れたの!?
 
それは是非、皆さん自身の目でご覧になって頂ければと思います。
 
ホームレスと直接会話するのを避け、
物陰から様子を窺うテレーズの真意とは?
 

 

 

【私の感想】 他者の心の痛みは分からない…

 

皆様がご覧になる楽しみを奪わないよう、これ以上詳細を書く事は差し控えさせて頂きますが、本作はテレーズが記憶喪失のホームレスの男と関係を構築しようとするのにはちゃんとした理由があり、それは彼女の心を深く傷つけたある事件が原因である事が後々分かってきます。

 

遂にはホームレスの後をつけ、

彼の住む川辺のテントを発見するテレーズ!

鬼気迫る顔が怖いですね…

 

 

ですが本作の厄介なところは、ホームレスが記憶喪失である以上、彼とテレーズの関係が実際はどのようなものであったのかが、観客である私たちには分からない事!!

 

 

ですので本作は、テレーズの語っている事が真実であるのであればラブロマンス映画となるのですが、もしテレーズの語っている事自体が嘘であったり記憶違いであったりした場合は、サスペンス映画となってしまうのです!!

 

 

 

そう。

 

他者の心の中は、第三者には分かり得なもの!!

 

 

 

私達観客が分かるのは、テレーズとホームレスの男の表情や外見、そして喋っている時の表情から推測した「多分こうなんじゃないかな?」という確証のない仮説にしか過ぎないのです…

 

ホームレスを恐れて逃げていたはずなのに

今度は後ろからついて行くテレーズ。

 

彼女の想いが真実ならラブロマンスなのですが

もし彼女が妄想を抱いて追いかけていたら

それはラブロマンスなのでしょうか?

 

 

 

私見ですがそんな本作は、第二次世界大戦時にナチスドイツに占領されたフランスの人々の悲劇を描いた作品かもしれませんが大切な人の長き不在によって、精神を病んでしまった悲しい女性の妄想を描いた作品ではないかと思うのですが、皆様はどう思われるでしょうか?

 

記憶喪失のホームレスが

自分の想い人だと確信したテレーズは

彼の記憶を取り戻すために

甲斐甲斐しい努力を始めますが

もしそれが彼女の妄想だとしたら??

 

ニコニコとしたテレーズの笑顔は

歓びの笑みなのか?

それとも狂気の表情なのか?

 

それは観客には分からないのです…

 

 

 

 

 

 

という訳で次回は

 

悪党どもに爆殺を!

 

というテーマで

 

マッドボンバー

 

という映画を解説してみたいと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします😘

 

 

 

ではまた(*゜▽゜ノノ゛☆

 

★おまけ★

併せて観たい超美麗なモノクロ作品!
「処女の泉」

超美麗なモノクロ作品と言えば

北欧映画界の至宝と呼ばれる

イングマール・ベルイマン監督の
諸作品も見逃せません!

 

発掘良品にも多くのベルイマン作品が

セレクトされているのですが

その中でも本作は、

絶望的な状況が自分の身に起こる前に、

ご覧になっていた方が

良い作品なのではないかと思います…