こんばんは。
ご覧頂きありがとうございます😊
本日も想像力と発掘良品の発掘⑰というテーマで
チャタレイ夫人の恋人(1981)
(原題:LADY CHATTERLEY'S LOVER)
という映画を解説してみたいと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします。
★発掘良品の発掘とは?
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本作は1981年に公開されたイギリスフランスの合作映画。
「チャタレイ夫人の恋人」というタイトルは、1974年の「エマニエル夫人」や1975年の「O嬢の物語 」などと並んで、劇場公開当時「子供は絶対観ちゃダメな雰囲気」が漂っていた作品!!
「夫人の恋人」というタイトルからして
隠微な響きがある「チャタレイ夫人の恋人」!
最も有名だと思われる「エマニエル夫人」。
タイトルからして背徳的な「O嬢の物語」。
これらの作品は文芸作品だと紹介されているにも関わらず、観客の関心はポスターに描かれている煽情的なシーン!!
そんな文芸作品だけど際どいシーンがある映画は、いつしか日本では"文芸エ〇ス"と呼ばれるようになり、本作以降も「愛人/ラマン (1992)」「ナイン・ハーフ (1985)」「蘭の女 (1990)」などの作品の総称として定着してゆくのです…
文芸作品だけど話題となるのは煽情的なシーン!
これが「文芸エ〇ス」の特徴だ!!
「キネマ旬報社」さんのデータベースによれば本作の解説は以下の通り。
ですが本作を理解して頂くために重要なポイントは、原作が出版されたのが1928年であるという事!!
1928年と言えば第一次世界大戦が終結した1918年から10年後であり、第一次世界大戦がヨーロッパの階級社会にもたらしたものとは、今までは戦場の華と言われていた貴族諸侯が、近代戦争においては役立たずである事が明白となってしまった時代!
本作は、それまでずっと社会を牽引していた上流階級の男性が自信を喪失する事で生まれて来る、新たな時代の胎動を描いたような作品。
主人公のコニー(コンスタンス)は、イギリスの貴族であるクリフォード・チャタレイ男爵に嫁いだ美しい女性。
コニーとクリフォードの結婚披露パーティは、一族郎党を招いて華々しく開催されますが、パーティの最中に第一次世界大戦が勃発の報が届き、クリフォードは勇躍して、その晩のうちに出征してゆきました!
相思相愛のコニーとクリフォードでしたが…
パーティの最中に第一次世界大戦の一報があり
男爵のクリフォードは出兵する事に!
ですが騎馬と歩兵が戦いの中心であったそれまでの戦争とは異なり、第一次世界大戦は近代兵器による大領虐殺が行われた戦争!!
歩兵を率いて塹壕を越えたクリフォードは敵の攻撃によって負傷し、半身不随となって帰還する事となりました…
最前線で指揮を執っていたクリフォードは
砲弾を受けて負傷して半身不随に…
帰国したクリフォードは、以前と同じように領主として毅然として振る舞いますが、下半身の感覚を失った事で男性としての機能を失ってしまったクリフォードは、結婚まで貞操を守って来たコニーと関係を持つ事ができなくなってしました…
コニーは、そんな傷心のクリフォードを甲斐甲斐しく世話をしますが、コニーが献身的であればあるほど、クリフォードの皮肉めいた発言でコニーを傷つけるようになってゆくのです。
自分ではベッドまでたどり着けず
コニーの手を借りるクリフォードですが
感謝の言葉もかけずに
服は自分で脱げるから手伝うなと
コニーを邪険にします。
何故クリフォードが自分に対して冷たいのか分からず思い悩むコニーでしたが、そんな気持ちを無視するようにクリフォードは「もし愛人が欲しいなら、僕の事は気にせず打ち明けてくれ」と、笑いながらコニーに話しかけて来たのです!
「コニー。愛人を作れよ!」
「クリフォード!何てこと言うの!?」
…んんんん。
もしクリフォードがコニーに愛人を持つよう推奨したのだとしたら、キネマ旬報社さんの解説にある「富裕だが性的に満たされない貴族の若妻」という説明は少しおかしいですよね
さて一体何故クリフォードは、妻のコニーに対して愛人を持つよう推奨したのでしょう?そしてコニーは、そんなクリフォードの言葉に対して、どのような行動をとったのでしょう?
それは是非、皆さん自身の目でご覧になって頂ければと思います。
戦場から帰った後、クリフォードは
人が変わったようになってしまいました…
多くを語らぬクリフォードの心中は?
皆様がご覧になる楽しみを奪わないよう、これ以上詳細を書く事は差し控えさせて頂きますが、本作はコニーの視点と、クリフォードの視点とで、描かれている視点が変わってしまう作品。
あまりネタバレしないようにしながらもう少しだけ解説させて頂きますが、上流階級の生まれのクリフォードは、貴族として果たすべき役割を全く果たせなかった自分に対して激しい自己嫌悪を抱いている男。
戦争で最前線に立ち、部下たちに範を示す事もできず…
領地を統治し、領民や家臣から尊敬の目で見られる事もなく…
男性を知らないコニーを肉体的に満足させる事もできず…
領主としてのプライドがズタズタになってしまったクリフォードですが、そんな時ふと頭をよぎったのは「それでもまだチャタレイ家を存続させるという使命だけは果たせる事ができるのではないか?」という想いだったのだと思います!
そう。
チャタレイ家の跡継ぎを産むのはクリフォードではなくコニー・チャタレイ!!!
クリフォードは意図的にコニーを自分の元から遠ざける事で、コニーが親族の誰かと結ばれてチャタレイ家の血脈を継いでもらおうと考えていたのだと思われます。
ですがクリフォードから冷たく扱われた上に、愛人を持てと言われたコニーが愛したのは、自分の事をチャタレイ家の子供を産むための存在とみなすような親族ではなく、自分の事を愛してくれた森番のメラーズという男。
貴族ではないだけでなく、かつて妻から逃げられた過去もあるメラーズはコニーとは身分違いの男性でしたが、彼が損得でコニーと関係を持ったのではなく、純粋に自分の事を愛してくれている事を知ったコニーは、それまで感じた事のない幸福を、メラーズの腕の中で感じてゆく事になるのです😘
何の打算もなく、コニーを美しいと思い
愛を囁いてくれたメラーズと出会い
コニーの心はエクスタシーを感じたのです…
私見ですがそんな本作は、キネマ旬報社さんの解説のような、富裕だが性的に満たされない貴族の若妻が森番と愛し合い初めて性に目ざめてゆく姿を描く文芸作品であると同時に家族や家庭を自分の体裁を保つための道具としてしか見ていなかったヨーロッパの上流階級たちの時代が、純愛によって滅んでゆく様を描いたパラダイムシフトを描いた作品ではないかと思うのですが、皆様はどう思われるでしょうか?
支配階級であるクリフォードにとって
ウズラは食料や狩猟のターゲットですが
ウズラの飼育を命じられていたメラーズは
ウズラたちに愛を注いでいました。
もし皆さんがコニーの立場であれば
クリフォードとメナーズ
どちらと愛し合いたいと思うでしょう…
という訳で次回は
諦めない悲劇
というテーマで
かくも長き不在
という映画を解説してみたいと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします😘
ではまた(*゜▽゜ノノ゛☆
★おまけ★
併せて観たい監督の私的な想いの描かれた作品!
「ナイン・ハーフ」
新人類と呼ばれた
80年代の若者たちが模索していた
新しい愛のカタチとは?
既存の愛に物足りなさを感じていた
一組の男女の交わした
9週間半の愛の試行錯誤を
美麗な映像で描いた
挑戦的なラブストーリーなのです!