こんばんは。

ご覧頂きありがとうございます😊

 

本日も想像力と発掘良品の発掘⑰というテーマで

 

死にゆく者への祈り(1987)

(原題:A PRAYER FOR THE DYING)

 

という映画を解説してみたいと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします。

 

★発掘良品の発掘とは?

発掘良品とは、惜しまれながらも2022年3月に終了を迎えた、TSUTAYAさんによる新作・旧作、有名・無名、公開・未公開ではなく「面白い」を基準に作品をセレクトし、毎月紹介してくれている映画ファンたのための素晴らしいシリーズ。

本シリーズは、そんな発掘良品の全作品を5~6年かけてご紹介させて頂こうという超長期目標のシリーズとなっております😄

 

 

 

 

ほんとうにあったこわいはなし

 

本作は1987年に公開されたイギリス映画。

 

本作は、テロリストが登場する映画なのですが、テロリストとのド派手な戦いを描いたエンターテイメント系作品が支持されやすい人気アメリカ映画と違い、IRAなどの国内問題を抱えるイギリスにおけるテロリスト映画は、テロリスト側の心理を描いたような重厚な作品が少なくなく、本作もそんな作品の一つ!!

 

 

本作は、無辜の人々を殺害してしまったテロリストが、死に場所を求めてさ迷うような重苦しいテイストのサスペンス映画なのです…

 

原題も邦題と同じ意味の

「A PRAYER FOR THE DYING」。

"死にゆくもの"とは誰なのでしょう?

 

 

 

アバウトなストーリー 

 

「キネマ旬報社」さんのデータベースによれば本作の解説は以下の通り。

 

IRAの元メンバーで、運命の時の流れの中を必死に生きようとする一人の殺し屋の姿を描く。

ジャック・ヒギンズの同名小説の映画化で製作はピーター・スネル、監督は「フラッシュ・ゴードン」のマイク・ホッジス、脚本はエドモンド・ワードとマーティン・リンチ、撮影はマイク・ガーファス、音楽は「背信の日々」のビル・コンティが担当。

出演はミッキー・ローク、ボブ・ホスキンス、アラン・ベイツほか。

 

 

 

…IRAって何?

 

という方のために少しだけ解説させて頂くと、IRAはイギリスからアイルランドの独立を目指し武装闘争を行ってきたゲリラ組織。

 

アイルランド内に駐留していたイギリス軍を市街地でも攻撃していたIRAは、一般人を巻き込むテロを行って来た組織としても名を知られていました。

 

1972年にイングランドの

ベルファストという街で起こった

「血の日曜日事件」も

IRAが関与していた事件です…

 

 

主人公のマーティンは、そんなIRAの凄腕のテロリスト。
 
マーティンは仲間と共にイギリス軍の車両が通る予定の道路に爆薬を仕掛けますが、イギリス軍の車両が後ろから来たスクールバスに道を譲ってしまったために、爆弾はスクールバスを大破させ、罪もないイングランドの子供たちを大量に死亡させてしまいます…
 
イギリス軍を爆殺する目的で
道路にトラップを仕掛けていた
マーティンたちですが…
 
イギリス軍がスクールバスに道を譲った結果、
 
目も当てられない大惨事に…
 
 
イングランドにいられなくなったマーティンはIRAの仲間たちにも行先を告げずにロンドンに向かい、旧知の便利屋に偽造パスポートを作ってもらってアメリカに逃亡しようとしますが、便利屋はパスポートを渡す条件として、ミーアンという大物ギャングの依頼を引き受けて邪魔者を暗殺するよう要求して来ます!!
 
誰にも知られないように
ロンドンに来たマーティンでしが
情報をキャッチした裏社会のミーアンは
便利屋を脅迫して、ライバルの暗殺を
マーティンに依頼して来たのです!
 
 
多くの子供たちを殺した事で慙愧の念に苛まれていたマーティンは、自分はもう二度と殺しはしないと言って一度は依頼を断りますが、ミーアンに逆らえばパスポートは入手できないため仕方なくターゲットを殺害する事を決意し、墓参りに来ていたターゲットを抹殺しますが、偶然通りかかった神父に暗殺を目撃されてしまったのです!
 
プロのヒットマンとして名を馳せていた
マーティンの腕を必要としていた
ミーアンの依頼を受けないと2人ともヤバイ!
仕方なく依頼を受ける事にします。
 
けれど、マーディンの暗殺現場は
マイケル・ダ・コスタという名の神父に
目撃されてしまったのです!
 
 
 
さて、果たして暗殺現場を目撃されてしまったマーティンは、神父に対してどんな行動を取ったのでしょうか?
 
それは是非、皆さん自身の目でご覧になって頂ければと思います。
 
尚、ミーアンの表の職業は
誰に対して親切で優しい葬儀屋さん。
本当に彼は恐ろしい存在なの!?
 
 

 

【私の感想】 死との対話

 

皆様がご覧になる楽しみを奪わないよう、これ以上詳細を書く事は差し控えさせて頂きますが、本作は「A PRAYER FOR THE DYING (死にゆく者への祈り)」というタイトルの意味を理解して頂けると、作品で描かれている事が理解しやすくなる作品。

 

 

本作で「死にゆく者」と言えば「スクールバスに乗っていた園児」を想像されるかもしれませんが「THE DYING」というは「THE」という単数形が付いていますので園児たちではありませんし、彼女たちは既に死んでしまっていますので「DYING (死にゆく)」という表現も適切ではありません。

 

…という事は「死にゆく者」は、マーティンが墓地で殺した男?

 

 

 

いいえ。

 

本作における「THE DYING」は物理的な死ではなく精神的な死の事であり、誤って園児たちを殺害してしまった時にマーティンの精神は死に向かって歩み始めていた「=THE DYING (死にゆく男)」だったのです。

 

 

 

そう。

 

キルケゴール曰く、死に至る病とは絶望の事。

 

 

 

イギリスを脱出してアメリカに逃亡しようとしていたマーティンですが、彼の表情や物腰からは既に生気が感じられず、恐らくですがマーティンは、もう生きていたくないと思っていたのだと思われます…

 

ですがキリスト教では自殺は厳禁ですので、自死を選ぶ事もできません。

 

 

 

そんな時に神父と出会ったマーティンは、神に対して何を祈れば良かったのでしょうか…

 

神父に殺しを咎められたマーティンは、

子供のような顔で呆然とします。

魂が死にかけていたマーティンは

目の前に現れた神父の中に神を見たのです…

 

 


私見ですがそんな本作は、行き場の失っていたテロリストのマーティンが、偶然知り合った神父の父娘のために命を投げ出すヒロイックな映画であると同時にIRAに参加しテロに身を投じていくアイルラド人の若者に対して、人を殺すという行為の先には何が待っているのかを説いている作品ではないかと思うのですが、皆様はどう思われるでしょうか?

 

マーティンと爆破事件を起こした友人は

逃亡したマーティンを捕えるため

ロンドンへとやって来ますが

彼もまた精神的には死んでしまっており

マーティンを見逃した事で

仲間たちによって粛正されます。

 

テロリストとは自分の魂を殺し、

仲間を殺すしような行為なのです…

 

 

 

 

 

という訳で次回は

 

地獄のアメリカ辺境地帯

 

というテーマで

 

サランドラ

 

という映画を解説してみたいと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします😘

 

 

 

ではまた(*゜▽゜ノノ゛☆

 

★おまけ★

併せて観たいIRAの映画!
「ベルファスト71」

IRA問題は、当事者でない私たちには

なかなか理解しづらいと思いますので

ご興味のある方は「ベルファスト」という作品と

「ベルファスト71」という作品を

見比べてご覧になる事をお勧めいたします。

 

「ベルファスト」で描かれた

平和だった1969年のアイルランドは

1971年の「ベルファスト71」で

地獄と化していたのです…