こんばんは。
ご覧頂きありがとうございます😊
本日も想像力と発掘良品の発掘⑰というテーマで
狼の血族(1984)
(原題:THE COMPANY OF WOLVES)
という映画を解説してみたいと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします。
★発掘良品の発掘とは?
↑今月のラインナップの詳細はコチラ!
本作は1984年に公開されたイギリス映画。
前回ご紹介させて頂いた「ザ・ゲート」が、男の子のためのホラー映画だとするなら、本日の作品は、女の子のためのホラー映画!
男の子が怖いものが「昆虫」や「死体」や「怪しげなロックアルバム」といった即物的なものだったりするのに対し、女の子の怖いものは「知らない世界へ自分を誘う何かの出現」という抽象的なもの!
窓の蛾が(お化けみたいで)怖~い、男の子!
知らない世界に誘われるのが怖い、女の子
(ヤン・シュバンクマイエル監督版「アリス」)
多くのスラッシャー系ホラー映画で、殺人鬼に翻弄されながらも最後まで生き残る女の子(ファイナルガール)も、知らない世界へ自分を誘う何かを恐怖する姿を描いているよう思われます…
女の子が恐怖するのは「誘う者」の出現!
ですが、女の子にとって知らない世界へ自分を誘う何かは、怖いだけの存在ではなさそうです。
本作は、恋愛経験がないロザリンという女の子が、恋の夢を見る恋愛をテーマにした作品。
ただしロザリンを恋の世界に導くのは、狼に変身する恐ろしい男だったのです…
ポスターに描かれるのは恐ろしい狼男!
ですが狼男がロザリンを誘うのは
大人の恋の世界だったのです…
「キネマ旬報社」さんのデータベースによれば本作の解説は以下の通り。
んんんん。
確かに本作は「中世の村に狼人間が徘徊する夢をみる少女」の映画なのですが「夢と現実を交錯して描いた作品」ではないのではないかと思われます。
主人公のロザリンは中世の少女ではなく、裕福な家で大切に育てられている少女。
彼女の部屋は女の子らしいアイテムであふれています。
子供なのに化粧棚もあるロザリンの部屋。
そんなロザリンには既に大人になっている姉がいます。
映画の冒頭は出かけていた両親が車で戻ってくるシーンですが、父母の帰宅を察して走って家に戻った後に何食わぬ顔で父母を迎える姉は、父母に怒られないよう面従腹背で立ち回る事ができる大人の女性ですが、父母や姉に対して何かと反抗的なロザリンは家族の悩みの種!!
父母が帰る前に急いで家に帰る姉は
怒られないよう立ち回れる大人の女性!
それに対して、姉のコスメを勝手に使い
昼間からふて寝しているロザリンは
家族みんなが、どう扱って良いのか分からない
難しい年頃です。
自分の部屋の鍵を閉めて寝てしまっているロザリンに怒った姉は、ドア越しにロザリンの悪口を言い続けますが、その悪口を聞きながらロザリンは、姉が森の中でさ迷っている夢を見ます!
姉の悪口を聞きながらロザリンが見たのは…
森の中でシフォンドレス姿の姉が迷っている夢!
夢の中の姉は、ロザリンの部屋に置いてある人形たちに襲われた末、狼の群れに襲われて殺されてしまいます!
夢の中の森には何故かロザリンの人形!
ロザリンのドレスもある森の中で
人形のクマにも襲われた姉は、
まるで2人の男に襲撃されるような
状況に陥った後に…
狼たちに囲まれて殺害されてしまいます!
え?
全然、ストーリーが分からない??
ですがもしここまでの内容がロザリンの夢であったと考えるなら、ストリーとしてではなく、映像で描かれている事を意味について考察して観る事も可能ではないかと思います😊
さて、自分より大人の姉が、シフォン ドレス姿で何者かに襲われ死に至る夢とは、一体何を暗示したものだったのでしょう?
それは是非、皆さん自身の目でご覧になって頂ければと思います。
姉が夢の中で着ていた
処女性を示すシフォンドレスに対し
ハート柄の寝間着のロザリン。
という事はロザリンは子供?
でも彼女の呼んでいる雑誌は
70~80年代に発行されていた
「MY WEEKLY STORY LIBRARY」
という有名人のゴシップ誌。
しかもサブタイトルは
「THE SHATTERED DREAM
(粉々になった夢=失恋)」!
さて、このシーンで
暗示されている事とは…
みちなみに実際に発行されていた
「MY WEEKLY STORY LIBRARY」は
こんな感じの女性誌でした…あらあら😓
皆様がご覧になる楽しみを奪わないよう、これ以上詳細を書く事は差し控えさせて頂きますが、本作はヘンリー・フュースリーという画家の描いた「The Nightmare (夢魔)」という有名な絵によく似たコンセプトで作られたと思われる作品。
ヘンリー・フュースリー作「夢魔」はコチラ!
眠っている女性の上に乗った夢魔が見せている夢は、恐らくですが淫らなもの!!
夢の内容が詳細には分からなくでも、作品の端々から、女性が起きている時には絶対に内容を語らないであろう淫らな夢は、背徳的であると同時に、淫靡な愉しみが隠されていたのではないかと想像でるのではないでしょうか?
別バージョンも多数存在する「夢魔」。
見ている夢は恐怖か?それとも悦楽か?
そう。
まだ性交渉を知らない少女にとって男性との性交を想像する事は、恐怖と期待が入り混じったものになるのではないかと思われます。
姉を埋葬した後、森の中に住んでいる
おばあちゃんの家に行ったロザリンは
姉は狼の姿に変われる男によって殺された
と教えられます。
尚、ロザリンのおばあさんは
彼女の部屋の棚の上に置いてある人形!
という事は2人の話は
おままごと遊びのような
ロザリンの一人会話!?
そして壁にはシフォンドレス!
ロザリンは、そろそろお年頃なのです…
私見ですが本作は、幻想的な赤ずきんをモチーフにした映画であると同時に思春期の女子が心の中で思い描いているであろう、少女から女へとなる時の興味と恐怖を映像化した作品ではないかと思うのですが、皆様はどう思われるでしょうか?
同世代の村の子供の告白を拒否し
彼の目の届かない木の上に登るロザリン。
少年の手の届かない場所に行ったロザリンが
手に入れたのは手鏡、オシャレな靴、口紅…
ファッションに目覚めてご満悦のロザリン。
そして次に待っているのは…
はい。
これが少女が心の中で夢見ている
大人への階段なのです😘
という訳で次回は
匠による至高の技!
というテーマで
ハウリング
という映画を解説してみたいと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします😘
ではまた(*゜▽゜ノノ゛☆
★おまけ★
併せて観たい発掘良品!
「モナリザ」
「狼の血族」を撮られた
ニール・ジョーダン監督が得意とするのは
男性に真実を語らない女性!
いがみ合っていた男女が
次第に仲良くなっていったとしても
男性が思い描いていた恋愛感情を
女性も持っているとは限らないのです…