こんばんは。
ご覧頂きありがとうございます😊
本日も想像力と発掘良品の発掘⑯というテーマで
スリ(掏摸)(1960)
(原題:PICKPOCKET)
という映画を解説してみたいと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします。
★発掘良品の発掘とは?
本日の作品は、前回と同様「抵抗(レジスタンス) 死刑囚の手記より」を撮られたロベール・ブレッソン監督の作品。
ロベール・ブレッソン監督は、映画監督になる前に画家や写真家として活躍していた"芸術家としての視点を持つ映画監督"であり、「抵抗(レジスタンス) 死刑囚の手記より」で描かれていたのは、死刑という極限状態に置かれたフォンテーヌ大尉が、生き延びるためにあらゆる手を使って脱獄を試みる"生への執着"を描いた作品ではないかと思います😊
一縷の望みを信じて、たった一人で
脱獄計画を敢行してゆくフォンテーヌ大尉は
人間の"生への執着"を体現した自分だと思います。
ですが、「抵抗(レジスタンス) 死刑囚の手記より」の次にブレッソン監督が描いたのは"生への執着"とは正反対の人間の負の感情!!
本作は、他者の金を奪う事に楽しみを覚えてしまった青年の破滅を描いていくのです…
フォンテーヌ大尉とは反対に
盗みに執着した青年の行きついた先とは…
「キネマ旬報社」さんのデータベースによれば本作の解説は以下の通り。
…スリの芸術的な要素が、主人公の青年の内面的な動きにおいてとらえられる??
なんだかおかしな日本語ですね
皆様がご覧になる楽しみを奪わないよう、これ以上詳細を書く事は差し控えさせて頂きますが、ミシェルは金欲しさにスリをするような根っからの悪党ではなく、自分探しをしている悩める青年。
彼は最初に盗んだ金を病気の母親の元へと持って行き、何かの足しにして欲しいと言って置いて帰りますが、自らは看病する事なく、やがてミシェルがしらないうちに母は死亡してしまいます。
…という事はミシェルは金が欲しかった訳でもなく、母に孝行したかった訳でもないという事?
はい。
劇中ミシェルは「才能がある人間は、窮乏している時は犯罪を犯したとしても許されるべきではないか?」という選民思想のような持論を語り、まっとうに働かず、母の介護もしないミシェル自身の自己弁護をし始めるのです。
そう。
成すべきことをやりたくない人間は、自己弁護で己の行動を正当化しようと試みるもの!
手先が器用なミシェルは、その才能を生かす事が天命だと自分に言い聞かせるようにスリに没頭する事で、誠実に働く事からも、家族を大切にする事からも逃避してゆくのです…
俺には才能がある…俺には才能がある…
大丈夫だ!俺は選ばれた人間だ!!
私見ですがそんな本作は、自分探しに没頭した結果、破滅的な人生を送っている現代の人にも共通するような、悲しいくらい浅薄な自己実現の末路を描いた作品。
「自分には〇〇の才能がある」「自分はもっと社会で評価されるべきだ」と言って価値ある仕事を軽視し、犯罪や不法行為を行う人間は、最終的には追い詰められ、悲しい末路が待っているのではないでしょうか?
ミシェルの愛読書は『スリ王 』と呼ばれた
ジョージ・バリントンという男の伝記。
スリも伝説的な存在なれば
本に記録されるような存在になれる!
まっとうに生きる事から逃げるミシェルは
犯罪者の伝記を見て勇気づけられ
今日も、自己弁護し続けます。
俺はスリの才能がある特別な人間だ…
という訳で次回は
合言葉はクー!
というテーマで
不思議惑星キン・ザ・ザ
という映画を解説してみたいと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします😘
ではまた(*゜▽゜ノノ゛☆
★おまけ★
併せて観たい発掘良品!
「レボリューション6」
80年代後半の西ドイツで反体制運動をしていた6人の若者が、古いアパートに仕掛けていた時限爆弾が15年後に爆発してしまい、警察は犯人を捜しを開始しますが4人は既に社会人!
けれど残りの2人はまだ闘争を続けており、つい先日、別件でアジトが捜索され、若き日に彼らが楽しそうに爆弾製造していた映像が押収されていたのです
大人になっても闘争活動を続けている2人は無職のダメ男!
いくら自己弁護を弄しても、社会から外れた生き方を続けていれば、かつての人間関係も消滅してしまうものなのです…