こんばんは。
ご覧頂きありがとうございます😊
本日も想像力と発掘良品の発掘⑭というテーマで
見えない恐怖(1971)
(原題:SEE NO EVIL)
という映画を解説してみたいと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします。
★発掘良品の発掘とは?
本作と次回ご紹介予定の「10番街の殺人」は、発掘良品第4弾にセレクトされている「絞殺魔」という映画を撮られたリチャード・フライシャー監督の作品!!
「絞殺魔」は、連続殺人の実行犯や被害者の名前が実名で登場する、1960年代初頭に起こったボストン連続絞殺魔事件の実録系映画!
まったく関連性のない女性が次々と殺害され続けた当時のボストンでは、人々も警察官も犯人が分からず町中がパニックとなっていきました!
↑緊迫した当時の状況をマルチ・スクリーンで
表現している「絞殺魔」は、パニックに陥った時、
何を信じてよいのか分からなくなる人々の状況を
画面を分割する事で再現しています!
無差別殺人鬼の描写を得意とするフライシャー監督は、「見えない恐怖」ではアクティブな殺人鬼を、「10番街の殺人」ではパッシブ(反アクティブ)な殺人鬼を描いているのです…
「キネマ旬報社」さんのデータベースによれば本作の解説は以下の通り。
人里離れた郊外にまきおこる一家惨殺事件!!
こう解説されてしまうと本作に登場する殺人鬼は「悪魔のいけにえ」のレザーフェイス一家のような怪物のような存在に思えてしまうかもしれませんが、本作の殺人鬼は、普段は街で暮らしているブーツを愛用している青年!
本作の冒頭のシーンは、殺人鬼が映画館から出て来るシーンですが、彼が観ていた映画は「THE CONVENT MURDERS (修道院の殺人)」と「RAPIST CULT (レイピスト・カルト)」の2本立て!!
↑スラッシャー映画っぽいタイトルの作品
ですが映画館を出た主人公の姿を、私たちが見る事はできません。
何故ならば、彼の顔は映画のラストまで画面には映されないから!!
本作のタイトルである「SEE NO EVIL(見えない悪)」というテロップが出た時にも、画面に映っているのは星の付いたカウボーイ・ブーツだけなのです
↑タイトルと共に映っている殺人鬼の足!
ええっ!
足しか映っていないのなら、殺人鬼がどんな人物か想像できない気がしませんか?
ですが、画面に映り込む街の映像で彼がどんな人物なのかは、なんとなく想像がつくようになっているのです!!
スラッシャー映画を観終わって映画館を出た殺人鬼の足取りはどこか楽し気!!
↑レイプ映画を観た直後に、ウキウキ気分で
フィンガーナップを楽しむ殺人鬼!
彼の歩いている街のショーウィンドウに写り込むんでいるのは、おもちゃの兵器や、殺人事件を煽情的に報道する新聞や、他者を攻撃して楽しむコメディアンの写ったTVなど!!
↑リアルな兵器のオモチャたち!
↑コミックは戦争物!新聞の記事は
「拘置所での暴動にマシンガンが炸!」という
鮮烈なタイトル!!
↑暴力礼賛のテレビ番組も映ります!
レイプ映画を観た後、武器のオモチャと、戦争コミックと、残虐な新聞記事や暴力番組が蔓延しているウィンドウを通り過ぎた殺人鬼は、夜道で水たまりを通った車にブーツを濡らされ、車の持ち主を殺害する事を決意します!
↑!!!!!!
↑(よし!俺のターゲット決定!!)
さて、この後殺人鬼は、一体どのような行動に移ったのでしょうか?
それは是非、皆さん自身の目でご覧になって頂ければと思います。
↑殺人鬼のブーツを濡らした車を運転していたのは
郊外に邸宅を持つ裕福なバークシャー家。
本作の主人公のサラは、落馬事故で盲目となり
療養のために叔父のバークシャーの家に
宿泊する事にしていたのです!!
皆様がご覧になる楽しみを奪わないよう、これ以上詳細を書く事は差し控えさせて頂きますが、本作は、近年多発するようになった衝動的な殺人事件と重なる部分が多い内容の作品!!
殺人鬼がバークシャー家の人間を殺害しようと決意したのは、ブーツを濡らされたからという単純なものですが、これは以前からずっと人を殺したかった殺人鬼が殺人を決断するキッカケのようなものであり、本当の原因ではありません。
そう。
激高型の殺人とは異なる衝動的な殺人とは、何かのキッカケで暴発するか分からない、極めて危険なものなのです!!
↑殺人鬼のベッドの下にはライフル!
恐らく彼にとって標的は誰でも良かったのです…
恐らくですが、実録映画でもある「絞殺魔」でリチャード・フライシャー監督は、ボストン絞殺魔について綿密に調査をした結果、他者に対する怒りから殺人を犯す激高型人間ではなく、気にくわない人間を身勝手に標的に定めて殺してしまう殺人衝動を抑えきれない人間が存在するという事実を認知してしまったのではないでしょうか…
↑カフェで足を椅子に乗せてエロ雑誌を読む殺人鬼!
もし店員が彼を怒鳴りつけていたら
標的は店員になっていたかもしれないのです。
本作の原題は「SEE NO EVIL」。
日本語に訳すと「見えない悪」ですが、この映画における見えない悪は、盲目の主人公サラが犯人を見る事ができないという意味だけでなく、観客である私たちが犯人を目視できない事と、衝動的な殺人者の(見えない悪意)は察知する事が不可能に近いという意味も含んでいるような気がするのですが、皆様はどうお考えになりますか?
↑失明しているサラにとって殺人鬼が
とてつもなくショッキングであるのと同様に
突如、理由もなく襲ってくる殺人鬼が
電車の中に出現するかもしれない現代は
「SEE NO EVIL」の時代なのかもしれません…
という訳で次回は
気楽に殺ろうぜ!
というテーマで
10番街の殺人
という映画を解説してみたいと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします😘
ではまた(*゜▽゜ノノ゛☆
★おまけ★
併せて観たい発掘良品!
「絞殺魔」
本編でも解説いたしましたが「絞殺魔」は、実際に事件に逢われた人たちへの綿密な取材によって作られた実録系殺人映画!!
ボストン絞殺魔が発生した後、街はどうなったのか、警察はどう動いたのか、マスコミの対応はどうだったのか、そして捕えられた犯人はどうう結末を迎えたのか等がリアルに理解できる「バイアスのかかっていない貴重な実録映画」なのです!