こんばんは。
ご覧頂きありがとうございます😊
本日も想像力と発掘良品の発掘⑬というテーマで
ストーカー(1979)
(原題:Сталкер)
という映画を解説してみたいと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします。
本日の作品の内容をポスターとタイトルから想像すると、怪しげな長年男性のストーカーが登場するサスペンス映画のように思えるかもしれません。
ですが本作で言うストーカー(STALKER)は“他者を執拗につきまとう犯罪者”という意味ではなく、“徘徊する人”という意味のストーカー!
本作は、どんな人の夢も叶える事ができる部屋がある「ゾーン」という荒廃した地帯を徘徊している道案内の男が主人公のSF映画なのです😊
↑徘徊する男の映画なのです…
「キネマ旬報社」さんのデータベースによれば本作の解説は以下の通り。
不可思議な立入禁止の地域である“ゾーン”?
はい。
本作は、宇宙人の来襲によって廃墟と化し、一般人立ち入り禁止となった「ゾーン」というエリアを舞台にしたSF映画!
ゾーンには既に宇宙人はいなくなっていましたが、現地を調査に出かけた軍隊が戻ってこなかった為に危険地帯に指定され、政府による厳重な管理下に置かれていました。
ですが「ゾーンの奥地にある“部屋”と呼ばれる場所にたどり着く事ができれば、その人の望みが叶う」という噂が流れ、密かにゾーンに侵入しようとする人が後を絶たず、そんな彼等をゾーン内部へと案内するストーカーと言われる仕事をする人も現れます。
本作の主人公はストーカー。
家族に内緒にゾーンに向かおうとするストーカーを妻は止めますが、ストーカーは妻の静止を振り切って、今日もゾーンへと向かいます!
↑「あなた、こんな危険な仕事は辞めて」
今回の依頼人は、作家と科学者。
感情で物事を語る作家と、冷静な分析を好む科学者の性格は正反対で、常に意見が相反しますが、ストーカーはそんな二人に対して、経験から学んだアドバイスをしながら、ゾーンの奥地へと入っていきます。
↑顔立ちとヘアスタイルが似ているので混乱しますが
喋り方がまったく異なる科学者(左)と作家(右)
さて、全く異なる生き方をして来た科学者と作家とストーカーは、果たして“望みが叶う部屋”へと辿り着く事ができたのでしょうか?
それは是非、皆さん自身の目でご覧になって頂ければと思います。
↑トロッコを線路に乗せ、いざゾーンへ出発!!
本作は、大変観念的な作品ですので、画面上で起こっている事だけを観ていると「何を言おうしている映画なのかよく分からない」という感想になってしまいますので、少しだけチェック・ポイントを解説してみたいと思います😊
チェック・ポイント①
アンドレイ・タルコフスキー監督の作風
解説にもある通り本作は、発掘良品第35弾にセレクトされている「惑星ソラリス」を撮られたアンドレイ・タルコフスキー監督の作品!
↑不思議の星「ソラリス」を舞台にしたSF映画!
「映像の詩人」と呼ばれた芸術家肌のアンドレイ・タルコフスキー監督は「惑星ソラリス」において、過去の美しい思い出に耽溺した人間たちが精神的に退行してゆくという「人間の心の弱さと哀しさをえぐるような話」を描いています。
↑人間の心の奥底にある「大切な記憶」を読み取り
愛していた人を再現するソラリスの海!
けれど人は、美しい思い出が再現されると
前に進む事を忘れ退行してしまう生物でした…
そんな「過去に執着する哀しさ」を描いたタルコフスキー監督が作った本作は、どんな望みでも叶う“部屋”へ向かう物語。
という事は、本作は「惑星ソラリスとは反対に「理想を叶えると人間の心はどうなってしまうのか?」が描かれた作品だと考える事ができると思います😄
↑望みが叶う部屋があったら人は幸せになれるの?
チェック・ポイント②
3人の訪問者の立ち位置
ゾーンに向かった3人は作家、科学者、そして道案内という全く違う生き方を選択した人たち。
作家とは、自分の心の中にある情念で、世界や人生を仮説で語る人。
科学者とは、科学的な見地と冷静な分析によって、世界や人生を解明しようとする人。
そして道案内(ストーカー)は、自分の経験してきた事を仕事している人。
3人の立ち位置は全く異なりますが、それぞれが望み叶う時というは、一体どんな状態なのでしょう?
これはとても哲学的な問いなので、彼等自身も自分がどんな望みを叶えたいのか分からないまま、ゾーンを彷徨い歩く事となるのです…
↑よく「夢を叶える為に頑張ろう!」と言いますが
本当に叶えたい夢って自覚できるのでしょうか?
チェック・ポイント③
現実とゾーンの色調のちがい
本作では登場人物たちの現実世界はセピア色、ゾーンな中は自然な色調という、2つの色調が使用されている映画!
↑現実世界はセピア色。
↑ゾーンの中は自然な色調!
これは、本作が共産主義国だったソビエトで作られた作品である事から、国民が厳しい管理下におかれている現実が無味乾燥なセピア色の世界であり、個人のどんな夢でも叶うというゾーンの世界を、自然な色調で描いたものだと推測されますが、何が起こっているのかが明確な現実世界に対して、何をすれば良いのかが皆目分からないゾーンの世界には、不安と混乱が待ち構えています。
恐らく人間は、管理下された人生で「秩序」と「無味乾燥」を、自由な人生においては「美しい世界」と「不安や混乱」を享受する事になるのではないでしょうか…
本作もまた「惑星ソラリス」と同様に、生きるとは何かを観客に問いかけて来る哲学映画であり、だからこそ映画のラストで、一見無味乾燥に見える現実世界の中にも、目を見張るような奇跡が存在する事が(観客にだけ)明らかになります!
そう。
安易に夢を叶えようとする人生より、日々の生活の中に素敵な奇蹟が隠れているものかもしれないのですから😊
↑あれ?映画のラストに登場するストーカーの娘は
セピア色の世界で描かれていません。
そう。社会を何色で観るかは、大人の認識であり
そんな世界を変えるのは子供かもしれないのです!
という訳で次回も引き続きアンドレイ・タルコフスキー監督作品として
離れて想うは懐かしき故郷
というテーマで
ノスタルジア
という映画を解説してみたいと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします😘
ではまた(*゜▽゜ノノ゛☆