こんばんは。ご覧頂きありがとうございます😊
本日も想像力と発掘良品の発掘⑪というテーマで
恐怖と欲望
現代も邦題と同様「FEAR AND DESIRE」(1953)
という映画を解説してみたいと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします。
本日の作品は、映画界の伝説的巨匠スタンリー・キューブリック氏の初監督作品。
映画史においても重要な作品と考えられる巨匠の初監督作品にも拘わらず、本作はキューブリック監督自身がお亡くなりになるまで、彼自身が版権を握り、商品化されなかった"封印"。
という事は、作品内容に問題のある作品なの?
いいえ。
むしろ本作は、キューブリック監督の諸作品のベースとなるような内容の、処女作品に相応しい習作と言って良い作品😊
けれど恐らくキューブリック監督作品としては、習作を自身の正式な作品として認める事が許しがたい事だったのではないでしょうか?
ですので本日は本作の解説を行いながら、キューブリック監督作品の傾向と、彼自身が封印した意図について想像してみたいと思います。
↑キューブリック作品っぽい、カッコいいポスターもあるのに
どうして非公開作品にしちゃったの??
「キネマ旬報社」さんのデータベースによれば本作の解説は以下の通り。
2013年まで日本未公開!?
キューブリック監督の没年が1999年ですので、お亡くなりになって14年してやっと公開されたって事ですよね😅
本作は冒頭で、戦争をテーマにした寓話であるという前置きがあり、特定の国の出来事ではないと説明されます。(キューブリック・ポイント① 普遍的出来事)
登場するのは航空機の落下によって敵が占領しているエリアの森に不時着してしまった4人の兵士たち!
彼らは森の中で怯えまくっており、ちょっとした物音にもヒステリックに反応してしまう極限状態にありました。
↑なんか音がした!!ギャー!(仲間突きとばし!)
…な、なんだ犬か
なんとかして自軍の陣地へ戻りたい彼らは、筏を作って川を下る事にしますが、完成した筏で川を下るためには夜を待つ必要があり、夜になるまでの間、周囲を偵察をする事にしますが、飛行機事故で落下した彼らは上官以外誰も武器を所持していませんでした…
そんな彼らは、3人の敵兵士が駐屯している小屋を発見し、武器と食料がある事を発見しますが、自分たちが武器を持っていない以上、小屋を襲っても逆襲されてしまう恐怖はありますよね…
だから彼らは小屋に突撃した際、兵士たちを問答無用で殺害する事にするのです(キューブリック・ポイント② 人間の蛮性)
↑突入だ!襲撃せよ!殺せ~!!!
敵兵士を惨殺した直後に彼らが行った事は、自らの飢えを癒す事!
そう。
彼らの精神は極限状態の前線で、"死の恐怖"と"自らの欲望"を行ったり来たりする事になるのです!(キューブリック・ポイント③ 二律背反)
↑死体を前で、彼らの食事を奪って食べる兵士たち。
これで「恐怖と欲望」
さて、そんな恐怖と欲望のまき散らす4人の兵士たちは、果たして無事、自軍の陣地へと戻る事ができたのでしょうか?
それは是非、皆さん自身の目でご覧になって頂ければと思います。
↑筏の近くへ戻ると現地の娘がいて恐怖しますが…
↑娘を拘束した後は、親しくなりたいという欲望が…
と、ここまでの解説で、本作が他のキューブリック監督作品とよく似た展開になっている事がご理解頂けると思います。
キューブリック監督作品の傾向は…
①普遍的な出来事
観客と同じごく普通の人間が、緊迫した状況でどうなってゆくのかを描いたいる。
例:「シャイニング」 子供と妻を愛する優しいお父さんが、緊迫した状況で狂ってゆく
↑家族を幸せにするためにロッジの管理人となった優しい父は
家族を殺す悪鬼のようになってしまいます!
②人間の蛮性
人間が他の動物と異なるのは、倫理やモラルを超えた蛮性を発揮できる存在だという事を描く。
例:「博士の異常な愛情」 相手国に原子爆弾を落とした後は、シェルターで楽しい日々を送りましょう😘
↑ストレンジラブ博士は、核戦争勃発にウキウキ気分!
例:「フルメタル・ジャケット」 超残酷で非人間的な訓練をすれば、超残酷で非人間的な戦場でも生き抜ける人材になる!
↑平然と他者を殺せるようなった兵士たちは、銃を構えて
ミッキーマウスマーチを歌いながら行軍していきます…
③二律背反
どちらが正しいとは断言できない二つのルールの中で、人間は都合の良い方を支持する。
例 「時計じかけのオレンジ」 個人の暴力、為政者の暴力、どちらを規制すべき?
↑モラル無きアレックスが悪なのか?
それともアレックスを廃人にする為政者が悪なのか?
はい。
これらの要素がすべて含まれいるだけでなく、映像的な美しさも完璧な本作は、決して観るに値しないような駄作ではないのです!
↑煙の吐き方が、画面の端に行くよう計算!!
直線的な美しさがキューブリック作品の魅力です😄
では一体なぜキューブリック監督は、本作を封印してしまったのでしょう?
私見ですが公開されなかった理由は、解説に書かれている通り「自主制作映画」だったから!
キューブリック監督は、自身で全をコントロールした映画を作ろうとする完璧主義の人!
そんなキューブリック監督は、予算などに制限があった本作を自身で顧みた時"やれなかった事"や"やり残した事"が眼に入ってしまうのは不快な事であるでしょうし、批評家などから未熟な部分を指摘されるのを嫌ったのではないでしょうか?
十全十美(全てが完璧)を求める人にとっては、習作は"絶対に認めたくない未熟さ"が見え隠れする作品!
完璧を求める人間だからこそ、完璧でない自分の作品を嫌い、周囲が望んだにも関わらず封印してしまった監督自身の行動もまた、キューブリック監督作品の特徴と酷似した行動をされているように思われるのですが、皆様はどう思われますか?
↑「シャイニング」撮影時、ニコルソンの振り下ろす斧と
同じタイミングでカメラを操作するキューブリック監督!
「恐怖と欲望」は、まだ監督自身が納得できない箇所が
存在した作品ではなかったのでしょうか…
という訳で次回は
何気ない問答
というテーマで
シャンドライの恋
という映画を解説してみたいと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします😘
ではまた(*゜▽゜ノノ゛☆
おまけ
「シャイニング」
「フルメタル・ジャケット」
「時計じかけのオレンジ」