こんばんは。ご覧頂きありがとうございます😊
本日も想像力とNETFLIXというテーマで
ワウンズ:呪われたメッセージ
という映画を解説してみたいと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします。
本日の作品は、単品でご覧になると何が何だか分からない展開の作品。
けれど、前回ご紹介させて頂いた同じ監督が作られたアンダー・ザ・シャドウという作品と比較しながらご覧になって頂けると、作者が描こうとした内容が、少しだけ理解しやすくなるのではないかと思います。
本作を作られたババク・アンヴァリ監督が2つの作品で描こうとしているのは、せなけいこ氏の絵本「ふうせんねこ」という絵本によく似た“怒る人にやって来るもの”。
↑「ねないこだれだ」に匹敵する恐怖の絵本「きれいなはこ」
相手との人間関係をボロボロにする事が分かっていても怒りを抑えられない人は、何を呼び寄せてしまうのか?というのを考察してみる事は、人間関係がヒステリックになりがちな、現在の世界状況下においては、意味があるのではないかと思い選ばせて頂きました😊
netflixさんの解説は以下の通り。
…なんだかよく分からない解説ですね
けれど、何の予備知識もなく本作を観た時の感想は、恐らくこんな感じではないかと思うのです。
ざっとストーリーを説明すると…
主人公のウィルは、恋人と同棲をしている気さくなバーテンダー。
↑公私ともに幸せそうなウィルでしたが…
ある晩、彼の勤めているバーで乱闘騒ぎが起きた際、現場にいた大学生が落としていった携帯電話に、生首が動く不気味な映像が映っていました。
↑な、なんじゃこの不気味な映像は
ウィルは不気味に思いますが、つい携帯電話のメッセージに返事を書きこんでしまい“あなたは選ばれました”というメッセージを受け取ってしまう。
↑他人の携帯のメッセージに返信してしまったウィル。
その後ウィルは、不気味な幻覚に悩まされるようになります。
↑体にムシが這い回ってる!!!!
心労が絶えないウィルは、バーの常連の女の子にふられた事でイライラを募らせ、同棲している女の子とも別れてしまいます。
↑彼氏がいる店の馴染みの女の子に振られてイライラするウイル。
家から追い出されたウィルは、バーの乱闘騒ぎを起こした男の部屋に行き、何かに憑かれたようになって、俺をもっと高みへ連れて行けと叫んで映画は終わってしまいます!
↑俺をもっと高みに連れて行けー!!!
う~ん。
やっぱり、よく分からない内容ですね
さて、本作でババク・アンヴァリ監督は、一体何を描こうとしていたのでしょう?
それは是非、皆さん自身で想像して頂ければと思います。
↑原題がWOUNDS(傷)というのも、よく分かりませんね
注:以下の内容は、ワウンズの内容を解析するために、映画のラストまで解説させて頂いておりますので、ご覧頂く際には、その事にご留意の上、お読み頂ければ幸いです。
ここから先は私なりの解析なので、間違ってる可能性もあるのですが、前作のアンダー・ザ・シャドウでババク・アンヴァリ監督が描いていたのは、何もなし得ていないシデーという女性の心の中に潜む怨念のような存在!
↑シデーの家に現れたのは、彼女の心の中の闇でした!
映画の後半で娘のドルサはシデーに向かって、子供の世話もできないお母さんより、あの怪物と一緒にいる方が楽しい!と言い放ち、シデーはショックを受けます。
身の回りの事すべてに対する不満を抱いていたシデーは、気が付けば娘にすら嫌われる怪物と化していたのです!
↑社会を憎んでいたら、自らが怪物化したシデー!
本作におけるウィルは、そんなシデーの男性版!
一見すると剽軽で楽しそうなウィルですが、彼は不誠実の塊のような人間です。
エリート大学の学生だったのに大学を見切って退学したウィルでしたが、その後就いた職業は、場末のバーのバーテンダー。
彼は昼間に会ってくれる友人もおらず、仕事時間までは家でTVゲームをして過ごしています。
↑ウィルの昼食は、公園でおひとり様…
そんなウィルは、恋人が大学で勉強しているのが気にくわず、大学教授を批判したり授業内容バカにしています。
↑授業なんかじゃ、本物の世界は見えないぞ!
さらに自分に恋人がいるにもかかわらず、他者の彼女に執拗にモーションをかけ口説こうとするウィル…
↑なぁ、俺は彼女と別れるから、君も彼氏と別れろよ…
…なんという身勝手!!
女性であるシデーが、自分の至らなさを自覚してイライラしているのとは逆に、男性であるウィルは自分の至らなさを直視できないままイライラしていたのです!
↑俺?いつでも絶好調だよ!(と言いつつ心の中はイライラ)
こういう人、現実世界でもいっぱいいませんか?
…なんだか人間って汚い存在ですね
けれど実は、人間は元来汚れた存在であるという考え方は、キリスト教の初期の時代から存在したのです!
ウィルと彼女は、携帯電話に写った生首映像の背後に「傷の翻訳書」と書かれた本がある事を知り、携帯の持ち主たちがグノーシス主義というものに傾倒している事を知ります。
グノーシス主義とは、宇宙に存在するものはすべて邪悪であり、人間の肉体や魂も例外ではないという考え方!
生来邪悪な人間が救済されるためには、肉体や魂から解放されなければならないと説くグノーシス主義は、当然ですが異端とされた教義です。
※この項は「創造主は悪神?! 東地中海で流行したグノーシス主義とは」というサイトを参考とさせて頂きました。
そして、そんなグノーシス主義の代表的な人物と言えばシモン・マグスという魔術師!
シモン・マグスは、使徒シモン・ペテロと魔術対決をした際に、死者の頭を動かす奇跡を起こしたとされているのです!
※この項は「エニェディ・イルディコー『シモン・マグス』世紀末の美しき魔法、奇跡の存在」というサイトの「シモン・マグスとシモン・ペテロ、シモンとピーター」という項目を参考とさせていただきました。
…おお。
これで本作で描かれたおおよその内容は理解できましたね😊
怒りが抑えられない人間の心の中に潜む存在に興味があるババク・アンヴァリ監督は、本作で、もし汚れた人間であるウィルの体に、グノーシス主義の魂が潜んだとしたら?という悪夢を描いているのです!
【ストーリーの流れ】
①ウィルは、実生活で何も成し遂げていない存在
②バーに来た学生たちは、傷の翻訳書に書いてあるシモン・マグスの奇跡を実践し成功する
③実験が成功した際、シモン・マグスもしくは神が降臨し、学生たちに取り憑く
④学生の携帯に連絡したウィルの存在を、シモン・マグス(またはグノーシス主義を信奉する団体)が知る
⑤空虚な人生を送っているウィルが、グノーシス主義の実践に相応しいと認められる
⑥ウィルの人生をメチャクチャにして、心の傷を広げる
⑦心の傷口の中にウィルが何を見たのかは、観客に委ねられる
⑧作品のメッセージ:空虚な人生を送る男の心の傷口には、得体のしれない何かが潜んでしまうかも…
汚れた人間であるにも関わらず非を認められないウィルは、自分の心の中の傷の先にこそ肉体や魂の開放があると考え、より狂暴になってゆくのではないか?
そう。
WOUNDS(傷)は、本来治すべきもの。
にもかかわらず、心の傷を次なるステップだと信じて、治すのではなく、よりその傷を広げて行こうとするウィルの心理は、きっと更なる悲劇を招いて行くのだと思います。
↑あれ?ウィルの後ろの背が血だらけに!?
これってウィルの傷ついた心の先に待っているもの
せなけいこ氏の「きれいなはこ」は、怒りが抑えられない犬と猫が、お化けに変えられてしまう絵本。
この本では、お化けにされた犬と猫はお化けの世界へ連れて行かれてしまいますが、もし、お化けになった犬と猫が、そのまま地上に留まっていたとしたら…
↑お化けの世界にいかないで、まだ周囲の人を傷つけたら?
本作は、怒りを収められない男の人の心の中の闇の先に待つ悲劇を暗示した、不気味な渦に巻き込まれるようなシーンで終わりを迎えるのです…
↑怒った男性の心の中に渦巻くものの先には…
という訳で次回は
死に日和にするために
というテーマで
ビフォア・アイ・フォール
という映画を解説してみたいと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします😘
ではまた(*゜▽゜ノノ゛☆
おまけ
※ワウンズ:呪われたメッセージはnetflixのオリジナル作品です!