昨日の夕べ晩酌に、札幌市中央区すすきのにある“四文屋”という焼きとんや焼き鳥をお品書きにしている大衆酒場へ寄る。そこで甲類焼酎の味醂割りにしたモッキリを飲んだ。
“もっきり”とは、大衆酒場で酒や焼酎などを1合ほどの容量のグラスで飲むスタイルのことで、盛り切りが転じて盛っきりと呼ばれる。東京の河童橋には、このもっきり専用グラスがある。
このグラスは『角七酌』と呼ばれ、角形の円で厚みのあるガラスでできていて、倒しても簡単にはグラスの縁が欠けたり、簡単には割れない丈夫なグラスである。容量は7勺が主流で、8勺のグラスもある。また専用の受け皿もあり、7勺用は深く大きく、8勺用は小さ目である。専用の受け皿を使わずにお通しの皿、ベリー皿、韓国風の金属の小皿などを代用にしている店舗が多い。
7勺の量は、尺貫法で体積の単位で0,7合である。1合は約 1,8039ℓ であるから、7勺は180×0,7=126ml の容量である。もっきりグラスには必ず受け皿にのせられて、その受け皿にこぼれるように酒を注がれる。このこぼれた酒の量とグラスの容量を合わせて正1合になる演出でもあるのが、つまりモッキリというスタイルなのである。
モッキリには清酒の他に、甲類焼酎の梅割りで飲むスタイルがある。このモッキリ専用の梅はシロップであり、関東では茨城県水戸市の酒造会社である「明利酒類」から発売されている商品で『梅の精』が流通している。また関東で流通する甲類焼酎のシェアはキッコーマンの商品が多く占める。
また愛知県四日市市の酒造メーカーである宮崎本店の甲類焼酎は全国的にも人気を呼ぶ商品であり、昨日いただいたモッキリはキンミヤであった。キンミヤでは亀甲宮本みりんも製造していて、この味醂割りのモッキリを呑んだ。味醂は調味料のイメージが強いけれども、本みりんならばお米のリキュールといえよう。
さて、もっきりグラスの角七酌だけれども、七勺の容量のグラスから勺を酌と表している。七勺を“ななしゃく”と漢音で言い表すが、飲食業界では“ななせき”と呼び表す。訓では勺を“くむ”と言い表すが、現代ではあまり使用されていない言葉であろう。