マーク・トウェインの『ハックル・ベリーフィンの冒険』を、先日、あらためて読んでみた。その前にディズニー映画の『トムソーヤの大冒険』も観たのだが、そこで思ったのが、子供の頃も、今もってバーネットは読んでいないし、これからも読むことはないだろうということで、映画なら気軽に観られると思うや、そこで『小公女』と『秘密の花園』の映画化された作品を鑑賞することにした。
さて、そこでまず、『小公女』であるが、数多く映画化された作品の中でも、1995年に製作された『リトル・プリンセス』(A Little Princess)を観て見た。これは監督がアルフォンソ・クアロン、出演に主演の主人公セーラ役のとびきり可愛いリーセル・マシューズ、悪役のミンチン院長先生にはエレナー・ブロンの配役によるワーナーブラザース映画である。
この映画では原作と物語の設定が少々違うようで、まずは原作のお話からしていこう・・・・・・
舞台は、ビクトリア朝の英国であり、19世紀のイギリスである。少女セーラ・クルーは、英領であったインドで、資産家の父、ラルフ・クルーと共に暮らしていたが、7歳の頃、父の故郷であるロンドンにあるミンチン女子学院に入学する。父の要望もあり、特別寄宿生として寄宿舎で生活をはじめる。聡明で心優しいセーラは、すぐに友人にも恵まれて前途洋々であった。
しかし、11歳の誕生日に父親の訃報と事業破綻の知らせが届き、これにより生活は一転する。セーラは屋根裏部屋をあてがわれ、使用人として働く事になったのである。突如訪れた不幸と、不慣れな貧しい暮らしの中でも公女様(プリンセス)のつもりで、優しさを失わずに日々を過ごすセーラであった。
或る日、窓から迷い込んで来た猿を、お隣の豪邸に届けに行った事から、この富豪こそが父の親友であり、父の事業の成功を告げ、遺産を渡そうと、セーラを捜し求めていたことが判明する。セーラは隣の家に引き取られ、貧しかった時に苦労を共にした寄宿舎の使用人ベッキーも一緒に引き取られて、その後、幸せに暮らした。
この原作と違い映画では、母を早くに亡くしたセーラが、軍人の父と二人でインドで暮らしていたところから物語は始まる。それは1917年のことで、父は英国の軍人で大尉であったが、戦場に行くことになったセーラのパパは、米国のニューヨークにある女学校の寄宿舎に、娘のセーラを入れることにして物語りは始まる。
セーラの入学した寄宿学校はミンチン女学院で、院長のミンチン先生はなんとも魔女の如く怖い。厳粛で堅苦しい寄宿学校でセーラは、やがて生徒たちの人気者となる。それはセーラがインドで聴き覚えた昔話を、寄宿舎の女の子たちに語ることで、セーラの異国の物語に魅了されたからだ。
寄宿舎には小間使いの黒人の女の子ベッキーが働いていたが、彼女は屋根裏部屋で暮らしていて、ベッキーは生徒たちとの交流を禁じられているのだが、セーラはベッキーに黄色い靴をプレゼントして友達となる。ベッキーもセーラに心を許して、セーラが暮らしたインドの昔話を聴くのを楽しみにするようになる。
しかし、父の戦場での訃報が届くと、それまでのお姫様暮らしは、一転して、寄宿舎でベッキーと同じ小間使いに転落する運命が待っていたのだ。それまで厳しいだけのミンチン院長は鬼の如く変貌して小間使いの使用人として扱うようになるのでした。・・・・・・あァ~可哀想なセーラちゃん!(思わずボク涙しました)。
そして、この映画は後半からファンタジックに演出されていく。それはそれでかまわないのだが、苦境に転落する現実と反比例して美しく物語りは展開するのだが、最初は空想や物語をお友達やベッキーに聴かせていたセーラも暗転する人生に悲しみを覚えて、それに涙し、そして、インドの物語をお友達に語らなくなったのだが、やがて、苦境の現実を受け入れて屋根裏部屋の生活を強く生きるようになると、インドのお話を求めるベッキーの要望に応えて物語る場面が、とてもとっても美しい。
さてさて、ミンチン女学院の寄宿舎で供された食卓の風景には現実にはカレーの料理が登場しないのだが、ベッキーに語るセーラの物語にインドのカレーやサフランなどのスパイスの芳香がする。その、場面を以下に・・・・・・
それは雪の降る寒い夜であった。・・・・・・(ベッキー)「インドはどんなところなの?セ-ラ・・・」、(セーラ)「空気が焼けるように熱くて独特な味がするのよ」、(ベッキー)「ココナッツみたいな味なの?」、(セーラ)「違うは、スパイスの味よ、カレーやサフランみたいな」、(ベッキー)「他には・・・」、(セーラ)「木蔭でトラが昼寝をし、湖では象が水浴びし、妖精たちを乗せた暖かい風が、草原を吹き抜け、頭上から降り注ぐ歌声が山々にこだまするの、空はいろいろな色が混ざり、孔雀の羽のよう」
このセーラとベッキーの会話のあとに広がる幻想的な場面と映像の美しさは、ボクが観たあらゆるメルヘンやファンタジー映画でも体感できないほど美しい映像で感動してしまった。ラストは、原作よりも、更におまけつきの、ハッピーエンドの結末なのだが、そこはネタバレになるので語らないようにしましょうネ。
アメリカの小説家フランシス・イライザ・ホジソン・バーネット(Frances Eliza Hodgson Burnett 1849-1924)が著した『小公女』(A Little Princess)は、1888年に「セーラ・クルー、またはミンチン学院で何が起きたか」というタイトルで当初は出版される。その後、大幅に加筆されて1905年に『小公女』(A Little Princess)のタイトルで発行された。
セーラが映画のセリフで何度も口にしておりましたが「女の子はみんなお姫様なのヨ」と、・・・・・・ボクもそう思いますネ。(了)