ノーベル賞作家の大江健三郎氏が亡くなられましたね。
彼の名著は数あれど、
私的に一番印象に残っている作品はやはりコレでしょう。
『個人的な体験』
障害を持って生れたわが子の死を願う青年の魂の遍歴と、絶望と背徳の日々。狂気の淵に瀕した現代人に再生の希望はあるのか? 力作長編。
である。
創作であるが作者自身の体験が元になって居るのでとんでもない説得力に圧倒される。
今現在では生まれる前にDNA検査で障害があるかどうか判るではないですか。
もし、自分の子供が障害を持って生まれる事があらかじめ知って居たらあなたはどうしますか?
実際にその検査が始まった頃に障害があると判っていても生む判断をした夫婦と中絶した夫婦がいました。
自分だったら一体どうするだろうか?
まさに生命の根源に深く刺しこんだ歴史的名著だと思います。
ちなみに私は独身時代に読んで、結婚がちょっと怖くなりました。(;'∀')
自分に子供とか色々な責任が負えるのだろうかと、
最後にこの本に対しての著者の言葉を引用して終わります。
「ぼくはすでに自分の言葉の世界にすみこんでいる様ざまな主題に、あらためて最も基本的なヤスリをかけようとした。すなわち、個人的な日常生活に癌のように芽ばえた異常を核にして、そのまわりに、欺瞞と正統、逃亡することと残りつづけること、みずからの死と他者の死、人間的な性と反・人間的な性というような命題を結晶させ、再検討することをねがったのである。大江健三郎」
謹んで氏のご冥福をお祈りします。