近年、梅毒の患者数は増加傾向にあります。
厚生労働省の発表によると、梅毒の報告数は2011年頃から増加に転じ、2024年のデータでも3年連続で年間1万人を超える高い水準が続いています。
今日、私の外来に40代の女性の患者さんが来られました。数か月前、健診か何かの検査で「梅毒反応が陽性」と言われ、不安になって当院を初めて受診された方です。
その後、抗生物質を4週間内服していただき、治療後の再検査を行いました。本日は、その結果説明のための受診でした。
外来で行う梅毒の血液検査には、大きく分けて2種類があります。
ひとつは感染の既往を調べるトレポネーマ試験、もうひとつは現在の活動性をみる非トレポネーマ試験です。
今回の外来では、トレポネーマ試験として TPHA、非トレポネーマ試験として RPR法を用いました。
その結果、TPHAは陽性、一方で RPR法の定量値は陰性となっていました。
TPHAは、梅毒に一度感染すると、治療によって治癒しても原則として陽性のまま残る検査です。そのため、この検査が陽性であっても、「現在も感染しているかどうか」を判断することはできません。
一方、RPR法は、梅毒の活動性や治療効果の指標として用いられる検査です。治療が奏功すると、その数値は低下し、場合によっては陰性化します。
つまり、今回の患者さんの場合、TPHA陽性は既往感染として自然な結果であり、RPR法の定量値が陰性化していたことは、抗生物質治療が有効であったことを示しています。
ただし、梅毒の治療効果判定では、一定期間にわたって数値の推移を確認することが重要であり、今後もしばらくは経過観察が必要になります。
話はまったく変わりますが、今日、鎌倉駅のCIALの看板を見ると、「I」の文字が消えていました。「あい」が・・・「愛」が、鎌倉から消えてしまうなんて……そんな、そんな。
梅毒は消えても、愛は消えないで欲しい!
