最近は、電車に乗ると車内モニターに動画が流れていますよね。
JRでは「TRAIN TV」という名称で、お店の紹介やクイズ、お笑い芸人さんのパフォーマンスなど、さまざまなコンテンツが流れています。
そんな中で、先日ふと目に留まったのが、「ヘム鉄と非ヘム鉄」 の説明でした。
私は以前、管理栄養士養成学科の教員をしていました。このテーマは、管理栄養士国家試験でも重要なポイントのひとつで、授業でも何度も説明してきた内容です。
思わず、「ああ、懐かしいな」と感じてしまいました。
まず結論から言うと、とてもシンプルです。
- ヘム鉄:動物性食品に含まれる鉄で、吸収率が高い
- 非ヘム鉄:植物性食品に含まれる鉄で、吸収率はやや低い
つまり、食品から効率よく鉄を摂取したいなら、動物性食品が有利ということになります。
学生には、理解しやすいように、ちょっとした“覚え方”も教えていました。
ヘム鉄の「ヘム(heme)」は、血液中の「ヘモグロビン(hemoglobin)」の「ヘモ」と同じ語源です。血液があるのは動物ですよね。植物を切っても赤い血は流れません。だから、ヘム鉄=動物性食品由来と覚えましょう。
一方、非ヘム鉄は植物性食品由来です。
さらに化学的には、
- ヘム鉄:Fe²⁺(2価鉄)
- 非ヘム鉄:Fe³⁺(3価鉄)
となります。
ここでも語呂合わせです。「ヘム」は2文字だから2価(Fe²⁺)、「非ヘム」は3文字だから3価(Fe³⁺)。
そして吸収率。Fe²⁺は「+」が2つで身軽そう、Fe³⁺は3つでちょっと重そう。身軽なほうが、体に吸収されやすいとイメージすると覚えやすいですね。
まとめると、
- ヘム鉄は Fe²⁺(2価)で吸収率が高い
- 非ヘム鉄は Fe³⁺(3価)で吸収率が低め
- 鉄を補給したいときは、ヘム鉄を含む動物性食品が効率的
具体的には、レバー(牛・豚・鶏)、赤身肉(牛肉、ラム肉)、魚(かつお、まぐろ)、貝類(あさり、しじみ、はまぐり)などがおすすめです。
ちなみに、植物性食品から鉄を摂りたい場合は、ビタミンCと一緒に摂るのがポイントです。レモンなどに含まれるビタミンCは還元剤として働き、Fe³⁺をFe²⁺に変えてくれるため、鉄の吸収率が高まります。
電車の中の何気ない動画が、昔の授業風景を思い出させてくれた、そんなひとコマでした。
