今日、30代の女性の患者さんが外来に来られました。

 

 「最近、血圧が高い気がして心配になって……」とのことでした。診察室で測った血圧は 145/104 mmHg。30代としては、やはり高めの数値です。

 

 さらにご自宅で測っている血圧は、これよりも高いことも多く、特に“下の血圧(拡張期)”がいつも100を超えるのが気になっている、ということでした。

 

 実は、比較的若い世代(30 〜 50代)の高血圧では、拡張期血圧も高くなりやすいという特徴があります。

 

 一方で、年齢を重ねると、今度は拡張期血圧が下がってきて、上と下の血圧の差(脈圧)が広がる傾向があります。

 

 これは、血管の状態の違いによるものです。

 

 若い世代では、まだ血管そのものは比較的しなやかです。ところが、細い血管(末梢血管)が強く収縮しているタイプの高血圧が多く、その結果、血液の流れが悪くなり、心臓が拡張している間も圧が下がりきらず、拡張期血圧が高くなる、という現象が起こります。

 

 さらにこの年代は、仕事の責任が重い、睡眠不足、強いストレス、運動不足、飲酒・喫煙などが重なりやすく、交感神経が過剰に働きやすい時期でもあります。交感神経が優位になると血管が収縮し、これも拡張期血圧が上がる大きな要因になります。

 

 その患者さんは、シングルマザーとして2人のお子さんを育てながら懸命に働いている方でした。睡眠時間はかなり短く、疲れがたまっている様子でした。まさに、血圧が上がりやすい条件がすべて重なっている状況だったのです。

 

 30 〜 50代の高血圧は、症状がほとんどないまま進みます。しかしこの時期に放置すると、将来の脳卒中や心筋梗塞のリスクが静かに高まっていきます。働き盛りの世代こそ、「できるだけストレスをためない」、「睡眠時間を削りすぎない」、「高血圧を放置しない」、この3つを、ぜひ意識していただきたいと思います。