健康診断でバリウム検査(胃透視)を受けた経験のある方は多いと思います。

 

 しかし現在、国際的にも国内的にも、胃透視は徐々に胃カメラ(上部内視鏡)へ置き換わる流れが進んでいます。

 

 というのも、胃カメラは

  • 感度・診断精度が圧倒的に高い
  • 胃がん死亡率を下げる効果が示されている
  • 被爆のリスクがない

といった大きな利点があるからです。

 

 とはいえ、すぐに完全置き換えとはいかない事情もあります。現場では、内視鏡医の不足や検査体制の限界があり、どの健診機関でも胃カメラに統一できるわけではありません。

 

 そんな中、今日、ある事業所の健診結果を産業医として確認していて、気になるケースがありました。

 

 下の写真をご覧ください。

 

 

 上部消化管の所見欄では、今回の検査結果が「異常なし」となっています。

 

 ところが、1年前の前回所見には、「逆流性食道炎」「食道裂孔ヘルニア」「出血性びらん性胃炎」「胃底腺ポリープ」と、4つもの所見が記載されているのです。

 

 そして、その右側の前々回の所見を見ると、またしても「異常なし」。

 

 「たった1年でこんなに病変が減るの?」と、少し疑問に思って検査方法を確認してみると ──

  • 今回:造影(胃透視) → 異常なし
  • 前回:内視鏡(胃カメラ) → 所見4つ
  • 前々回:造影(胃透視) → 異常なし

 つまり、胃カメラでは見つかっていた所見が、胃透視では“いずれも見つからなかった”ということになります。

 

 もちろん、この1例だけで「胃透視は見落としが多い」と断定はできません。

 

 ただ、“見落としが起きても不思議ではない検査方式”だと解釈できる結果であることも事実です。

 

 個人的には、せっかく被爆までして受ける検査であるにもかかわらず、重要な所見が拾えない可能性があるのなら ── 今後は、胃の検査はすべて胃カメラにしようかな、と強く思った出来事でした。