今日も、健康診断の血液検査のお話です。

 

 先日は「LDLコレステロール」について書きましたが、今回は「中性脂肪」について。

 

 健康診断では、血液中の中性脂肪(トリグリセリド)を測定することに加えて、腹部超音波検査を行なうことがあります。その際、「脂肪肝ですね」と言われる人は珍しくありません。

 

 脂肪肝とは、肝臓の細胞の中に中性脂肪が溜まった状態のことです。

 

 

 そう聞くと、「じゃあ、脂肪肝の人は血中の中性脂肪も高いはず」と思う方が多いのですが、実は 血中中性脂肪が正常でも脂肪肝の人はたくさんいます。

 

中性脂肪はどうやって吸収されるのか?

 まず、中性脂肪の流れを簡単にご説明します。小腸で吸収された中性脂肪は、そのままでは血液(水分)に溶けないため、「カイロミクロン」というカプセル に入って体内に運ばれます。カイロミクロンは全身を巡った後、残った分(レムナント)が肝臓に取り込まれます。肝臓に到着した中性脂肪は、今度は「VLDL」という別のカプセル に入れられて、血液中に送り出されます。

 

 

血中中性脂肪が正常でも脂肪肝になる理由

 ここで大事なのは、「肝臓に入ってくる脂肪」と「肝臓から出ていく脂肪」のバランスです。もし、VLDLを作る力が弱まったり、何らかの理由でカプセルがうまく作れなかったりすると、

  • 肝臓の中に脂肪(中性脂肪)がどんどん溜まる
  • でも、血液中の中性脂肪(VLDLとして送り出された分)は増えない

という状態になります。

 

 これが 「血中中性脂肪は正常なのに脂肪肝」 の正体です。

 

肝臓を大学に例えるとわかりやすい

 脂肪の出し入れを大学に例えると、よりイメージしやすくなります。

  • 肝臓に入ってくる脂肪=新入生
  • 肝臓から血液に送り出される脂肪=卒業生
  • 肝臓に溜まる脂肪=在学生

と考えてみてください。

 

 もし、卒業が難しい大学なら、新入生が増えても卒業生は増えませんよね。そのかわり、大学に在籍し続ける学生(=肝臓に溜まる脂肪)は増えていきます。

 

 まさにこれが、血中中性脂肪が正常値でも脂肪肝になる理由なのです。

 

では、なぜVLDLがうまく作れなくなるのか?

 理由はいろいろあります。糖質の摂りすぎ、アルコール、遺伝(PNPLA3など)、インスリン抵抗性など、複数の要因が関わります。

 

 ただ、今日のところはここまでにしておきましょう。いずれ、VLDLが減る理由についても詳しく説明したいと思います(、、、たぶん)。