「不明熱という病気があります。文字どおり、原因がわからない発熱を指します。
その定義は、「3週間以上にわたり、38.3℃以上の発熱が数回みられ、3回の外来受診または3日間の入院精査を行っても原因が特定できないもの」とされています。
先日、私の外来にも不明熱の患者さんが来られました。不明熱と聞くと、「原因が不明」と言うだけに、医師にとっても慎重な対応が求められる病態です。統計的には、原因の内訳は次のように報告されています。
- 感染症:約30%
- 膠原病・全身性炎症疾患:約30%
- 悪性腫瘍:約20%
- その他:約20%
この「その他」の中には、薬剤性(薬剤熱)が含まれており、実はほぼすべての薬剤で起こりうるとされています。
今回の患者さんでは、残念ながら明確な原因を特定することはできませんでした。とりあえず対症療法として内服薬を処方しましたが、もし改善がみられなければ、検査設備の整った病院で精査を依頼する予定です。
原因の見えない発熱は、患者さんにとっても医師にとっても不安なものです。しかし、焦らず一つずつ可能性を絞り込み、少しずつ「不明」を「明」にしていくことが大切だと感じます。