おばんです。
今日は、行政上の強制措置についてみていきたいと思います。
行政(国であったり、県や市町村)は、国民生活の向上や生命、財産を守るためにいろいろな活動をしています。
そのため公益実現のため国民に対して義務を課すこともあります。
ですが、国民がその義務を履行しない場合に、それを放置しておくと公共の利益に悪影響を及ぼすことが多々あります。
そこで、義務の不履行があったときに、実力行使をし、義務を履行させることにより行政行為の実効性を確保しようという趣旨で設けられた制度が行政上の強制措置です。
この義務履行確保手段として、
行政庁自体が自力執行する行政上の強制執行の制度
行政罰の制度
この二つの制度が用意されております。
二つ目の行政罰については後日にあらためて書きますね。
各制度は、意味合いが異なるため、一つの義務不履行に対して併用することが出来ます。
ここでポイントです。
義務履行の確保手段とあるとおり、国民が行政上の義務を負担していることが前提となっております。
行政代執行法
第一条 行政上の義務の履行確保に関しては、別に法律で定めるものを除いては、この法律の定めるところによる。
第二条 法律(法律の委任に基く命令、規則及び条例を含む。以下同じ。)により直接に命ぜられ、又は法律に基き行政庁により命ぜられた行為(他人が代つてなすことのできる行為に限る。)について義務者がこれを履行しない場合、他の手段によつてその履行を確保することが困難であり、且つその不履行を放置することが著しく公益に反すると認められるときは、当該行政庁は、自ら義務者のなすべき行為をなし、又は第三者をしてこれをなさしめ、その費用を義務者から徴収することができる。
この第一条の法律と第二条の法律(法律の委任に基く命令、規則及び条例を含む。以下同じ。)の対比から第一条の法律には条例は含まれません。
強制執行の制度
代執行
これは上記の行政代執行法の第二条の内容となります。
要件を抜き出してみますね。
法律又は行政庁により命ぜられた作為義務があること
他人が代つてなすことのできる行為であること(代替的作為義務)
義務者がこれを履行しないこと
他の手段によつてその履行を確保することが困難であること
その不履行を放置することが著しく公益に反すること
それでは、代執行の原則的な手順を確認します。
相手方の義務の不履行が前提です。
1.相当の期限を定め、その期日まで履行がない場合、代執行を行う旨をあらかじめ文書で戒告しなければならない。
↓
2.指定期日まで義務を履行しないとき、代執行令書にて、代執行の時期、責任者の氏名及び代執行に要する費用の見積額を通知する。
↓
3.代執行実施後、義務者に文書にて費用の納付を命ずる。
納付がなされない場合、国税滞納処分の手続きにより強制徴収する。
例外
非常の場合、危険切迫の場合
1、2の手続きを経ることなく代執行することができます。
第四条 代執行のために現場に派遣される執行責任者は、その者が執行責任者たる本人であることを示すべき証票を携帯し、要求があるときは、何時でもこれを呈示しなければならない。
行政代執行法は代執行の一般法の位置付けとなっております。
執行罰(間接強制)
非代替的作為義務や不作為義務が履行されない場合、行政庁が一定の期限を示し、期限内に履行されない場合に過料を科す旨を予告し、義務者に心理的圧迫を加え、間接的に義務の履行を強制すること。
執行罰は、制裁目的ではないため、義務が履行されるまで、何度でも科すことができます。
この執行罰については一般法はありません。
ここで辞書です。
過料=行政上、軽い禁令をおかしたものに支払わせる金銭。
刑罰ではないため、刑罰と併科することができます。
直接強制
義務者が義務を履行しない場合に、直接に行政庁が義務者の身体または財産に強制力を加えて義務の内容を実現すること。
この直接強制は即効的な効果は期待できますが、その分、義務者の身体や財産に直接作用するため、人権侵害の程度が大きくなるのが実情です。
そのため、この直接強制についても一般法は存在しません。
行政上の強制徴収
国民が税金などを納めない場合に、強制的に徴収すること
これは直接強制の一種で、金銭債権の強制執行手続について認められた方法です。
国税の強制徴収に関しては、国税徴収法に定めがあります。
ここに記載した四つの他に行政上の即時強制と言うのもあります。
即時強制
あらかじめ義務を命ずる余裕のない急迫の場合に義務を命ずることなく(義務の不履行を前提とすることなく)、直接に義務者の身体や財産に実力を行使し、行政上必要な状態をつくり出すこと。
国民の身体や財産に重大な侵害行為となるため、法律の根拠がないと行うことはできません。
また、一般法も存在しません。
即時強制と直接強制、どちらも直接に義務者の身体や財産に実力を行使しますが、義務を命ずる余裕のない場合と義務を履行しない場合とで全然意味合いが異なりますので注意が必要です。
少し長くなりましたが大切なところですのでもれなく把握しましょう。
んでまず、また。。。