第一話「バリスタと話す猫」後編

「では、ドラゴンマウンテン産の深煎りで」
 

ルナは無意識のうちにエスプレッソマシンの前に立っていました。 やがて、動き揺れる心とは裏腹に、手は冷静に動いています。 豆を挽き、タンピングの圧も、蒸気の調子も、全て普段通り。
 

マシンから立ち上がる湯気、淡く青く光る。南方密林の豆には、まだ微かな魔力が残っているからだ。
 

「どうぞ」
 

小さな魔法カップをモカの前に置いています。 カップの縁には、簡単な保温と浄化の魔法陣が刻まれている。
 

「素晴らしい香りですにゃ」モカは慎重にカップに鼻を決めた。
 

「才能…ですか?」
 

「このコーヒー、普通のエスプレッソではありませんよ」 モカは一口飲んで、満足して目が覚めた。 「あなたは無意識のうちに、豆に残る魔力を活性化させている。」
 

「私はただ、美味しいコーヒーを入れようとしているだけですが…」
 

「そうそう、その『ただ』が重要なんですにゃ」 モカの琥珀色の瞳が我慢した。
「王立魔法学院の連中は、魔力を制御しようと意識しすぎる。でもあなたは違う。自然に、コーヒーと対話するように魔力を扱っている」

 

空中庭園から差し込む光が、店内をゆっくりと照らし始めていた。
 

「私は…魔法が使えるんですか?」
 

「ええ、なかなか珍しい才能です。魔法使いの多くは詠唱や魔法陣に頼りますが」 モカは優雅な自由でヒゲを整えながら続けた。


その時、2階の豆保管庫から物聞こえました。


「あ、オーナーが起きてきたみたいです」


「そうですか」モカにはやりと笑った。

「では、私はこれで。また来ますよ、ルナさん」
 

「え?ちょっと待って!まだ色々聞きたいのですが…」
 

黒猫の姿は、すでに入口の魔法の門の向こうに消えていた。 残ったのは、かなすか魔力の残り香と、空になったエスプレッソカップ。

 

「おはよう、ルナくん。今日も早いねぇ」
 

階段を降りてきたオーナーは、いつもの優しさ笑顔を捨てている。ルナは思わず、その表情に何か別の意味を探してしまった。
 

「は、はい!開店の準備、少し終わります」
 

外では雨が上がり始め、魔法商店街から朝の喧騒が響き始めていた。

 

 

これは、珈琲と魔法が織りなす物語の、始まりの一ページ。明日も、モカは現れるのだろうか?そして、自分の中に目覚める不思議な力の正体とは…。
 

ルナは静かに、今日一日のコーヒーの仕込みを始めました。豆を挽く音とともに、また新たなコーヒーの香りが、店内を優しく包みこんでいきます。

 

INIC coffee