フランス本国では初登場興行1位だった作品、と書かれたポスター。


この作品、好評なようで、平日13時台にまだ1日一回上映していました。土曜から10時台に1回しか無くなりますので、昨日急いで行ってきました!


トリコロール(フランス国旗と同じ三色)の、可愛いパンフ。


『負け犬の遠吠え』でお馴染みの酒井順子さんもコラムを寄せていました。





原題は Une Belle Course(或る美しいコース)

英語圏にては Driving Madraine(マドレーヌを乗せてのドライブ)

ここ日本にてはシンプルに パリタクシー(日本人は、パリと題名に付けなきゃ見に来ない?!)

タイトル付けのセンスが各言語により違って面白い。たしかに、アメリカには90年代の名作 Driving Miss Daisy があり、ドライブした月日はだいぶ違い、この映画のほうは1日だけ一緒に過ごすわけですけど、似てはいますね。



意外な結末に感動!という、ヒューマンコメディな触れ込みですが、結構ショッキングな中身です。最後はタクシー運ちゃんに天からのご褒美があっておしまい。ですけど、


おばーちゃんを川の側の路上でピックアップしたとき、すぐに、車窓にでっかい邸宅がわざとらしく映されるので、

これが自宅だったんだなきっと!売却したからもう自分のものではないので路上に立って待っていたのでは無いかな?とピン!と来ます。パンフにもその旨載っていました(行程①)


セーヌ川の右岸(リブ・ドロワット)しかまわらない道のりで、偶然ですが私も右岸の9区や10区、1区等をうろうろして過ごしていて、カルチェ・ラタンと呼ばれる、ソルボンヌ大学付近を含む、左岸(リブ・ゴーシュ)には行ったことが無いのです、だから見たことある景色がバンバン出てきました。


行程図で10区に写真が貼ってある建物はマドレーヌ寺院(La Madraine)で、路上にどどーん!とあるので驚きます。誰でも入れます。壁に第二次世界大戦?の戦没者の名前がプレートでびっしり貼ってあります。


観覧車(チュイルリー公園にある)が映る頃には夜になってました。おばーちゃんが入る老人ホームはかなり都心の4区にあったみたいです。ノートルダーム教会が見えるような地域です。隣の1区には高級ブランドの路面店が並ぶ『ヴァンドーム広場』があります。

私がタクシーに乗ったのは空港(CDG)から市内までと、パリを発って南へ向かうTGVに乗るために(リヨン経由・スイスのジュネーブ行き)SNCF(日本でJRに当たるような国鉄)の『リヨン駅』(リヨン行きの列車が発着する駅)まで行く時だけで、あとは全て地下鉄(メトロ)であちこち観光に行ってました。


フランスでは流しのタクシーに手を挙げても拾えず、決められたタクシー乗り場に並んで乗るものなので、手を挙げて止まってくれないのは人種差別では?と誤解したまま旅行から帰った人も知っています。この映画の中の おばーちゃんは、配車してもらって乗れていました。

私は大きな荷物を引きずって、観光客然としていたから情けをかけてもらえたのか、手挙げでタクシーが止まってくれて、電車に乗り遅れずに済みました。



これは、50年代にまだ抑圧されていた女性史にかかわるお話だったのです。家庭内暴力で離婚する人は居ない時代で、みな横暴な亭主に耐えて結婚生活を送っていました。おばあちゃん役を演じた女優さん兼歌手、のインタビューで、うちの母も祖母もそうだった、という驚きの事実が!!

いまは、日本女性よりずっと我慢しないフランス人女性しか一般には知られていないような時代になり、様変わりしましたが、

キリスト教カトリックが強い影響を持つ社会であり、1970年代になっても堕胎が非合法だったので、望まぬ妊娠でやむを得ず危険な闇手術で命を落とす女性が多かったそうですし、

1968年に女性開放運動の波が起きるまでは、全国に花嫁修行学校がありました。田舎娘は中卒でそこに入り、18歳ぐらいでみなどこかへお嫁にいく人生が主流だったんです。恐ろしい…戦後とは思えない。アメリカなどとは偉い違いです。

じゃあそれよりずっと昔の戦前にすでに職業婦人(帽子屋さんのお針子)で、後にひとりでお洋服ブランドを立ち上げたシャネルはどうやったの?というと、

歴史の本によれば、地方の農村出身女子がお針子さんをしていたので、彼女たちのほうがむしろ、貴族やブルジョワの家庭の女子達より自立していたんだそうですね。働かざるを得なかったので…


いまでも、教会で結婚式をやると、離婚しづらい社会なので、夫婦仲が冷めても、ダブル不倫しつつ結婚し続ける仮面夫婦も多いですし、パックス(子供が居たって籍をいれない事実婚)がたくさん居ます。この点はドイツも同じで、正式に結婚しなくても子育て支援などが受けられますから結婚にはあまり意味がなくなってきています。


PACSを詳しく説明しているアメブロガーの方いらっしゃるので(長く愛読しているブログです)リツイさせていただきます♪



もとは、同性婚の方々にも異性婚とおなじ権利を!という目的で作られた制度ですが、現在は法律的に同性婚が可能になって、しかし異性同士のPACSの需要は減らない。という現地事情、なんですね。


マドレーヌばあさんの若い頃を演じた女優さんは、とっても美しかったです❤️

最近売れっ子っぽい経歴が載っていますね。


中盤のショッキングな事件にはぎゃあーー!!とか、ヒー!!っとか声を出さないようにするのが大変ですが、

勇気ある女性のお話!!

1950年代の裁判では有罪。夫が虚偽の証言をしたのが信じられちゃいました。法廷の外では"マドレーヌを無罪に!"と叫ぶ女性たちがデモする声が聞こえてきましたが、時代が時代で、禁錮25年の重い判決。


しかし服役中に世の中が変わり、刑期が見直されて、12年に減刑されて、出所したら、小学生だった息子は大学生ぐらいの年齢になっていました。

法学部に行っているんでしょ?と聞いたら、大学はやめて、プロの写真家になった、と…

報道写真家なので、ベトナム戦争に行ってきます!と出かけていき、半年後に死亡。それが1969年で…もうすぐ終わりの、激戦時期に行っちゃったんだ!アメリカでは1968年に反戦運動が起こっているので、もう辞めようという機運にはなっていましたが、結局やめられず、ソ連に支援された北ベトナムが勝って終了。アメリカ軍が初めて敗北した戦争になりました。悲惨なベトナム戦争を描いたアメリカ映画はとくに沢山あります。


自分のルーツ(ナチスに占領されていたパリをアメリカ軍が開放し、町中お祭り騒ぎだった夜に、米兵とダンスで知り合ったマドレーヌがその晩作った子供なので、半分アメリカ人)を辿るように、米兵が戦っているベトナムに戦時写真を撮りに行こうと正義感に燃える青年に成長。なにか運命のようなものを感じますね。


マドレーヌ婆さん、まるで『タイタニック』の最終場面のように、天国でその初恋の米兵とダンスしてました!天国のばあさんも米兵も若い容姿のまま。素敵なラストでしたねぇ…


日本人が太平洋戦争での悲惨な歴史を決して忘れないのと同じように、フランス人にとっても、二度の世界大戦(特に第二次)はずっと語り継ぎたい、忘れられない歴史なんだと思います。アッサリと隣国に降伏して、傀儡政権をつくり(例えると、日本国の息がかかった満州国のようなものですね。)南フランスのヴィシーに政府を作って、戦時中はナチスに協力して表面的には大人しく過ごしました。地下活動(レジスタンス)は有名で、それの甲斐もあっての連合国からの援軍が。

水面下でイギリスはアメリカに援軍をお願いし、実際にノルマンディに上陸したのはアメリカ軍…ドイツはイギリスにも空爆に行っていたので英国内も防戦一色。報復で英空軍がドイツに空爆に行ったりはしてましたが陸軍は初期に痛い目に遭っていますから…(という部分は映画『ダンケルク』で描かれました)

ついにパリ開放!!

お祭り騒ぎで、若い娘と米兵のカップルが何百組出来たとしてもおかしくなかったのでは…


すごい女一代記、なんだけど、90代でさらっと爽やかに生きているおばあちゃん。悲しいことばかりだった一生をタクシー内でつらつらと聞かされつつ思い出の場所をまわる。同情せざるを得ないです。


一夜の情事で大当たりして子供を身籠るマドレーヌ、戦後に子守を母に頼みながら自立しようと舞台の衣装係として働いて、しかし知り合ったハンサムな男性はDV男。息子に暴力を振るうのだけは許せず、そいつに報復。お縄となり、国中にニュースとして流され"時の人"になるが有罪にて刑務所に服役。出所後は息子が戦場カメラマンとして亡くなり国民的英雄に…お葬式がニュース中継されそうになるほど。晩年は社会運動に参加して、タクシー運ちゃんが知らなかっただけでかなりの有名人だったわけですね。


悲しいことに、息子を守るために服役したようなものだったのに、かつて出所した時分に再会できた息子は『ここでだって僕は刑務所に居るようなものだった』とマドレーヌに言いますね。それだけ有名な犯罪者の息子だったらそりゃ、子供には生きづらいよね。


フランスじゃ皆がわかってる事柄も、日本人にはピンときていないかも…70年代の恋愛映画や、現在も作られている当時を描いた映画を見て、いろんな知識を得られますので、映画後の追い映画(フランスの女性開放もの一気見)もおすすめします。ほんと、一時期まで、日本よりも後進国だったぐらいに酷かったらしい。"キリスト教社会"の闇を感じますね…



↑これはジュリエット・ビノシュ主演のコメディですが、物語は1960年代終わり頃。ビノシュ

演じる校長先生は50代ぐらいの設定なので戦争経験者で、その時期を振り返って語る場面も少し出てきます。

ちょっとノリがアメリカ映画と違いますが、ウーマンリブを描いた映画の一つです。



ムービックスで最近2回見ていたので、今回は 1回1200円で見られるリピータークーポンを使って見てきました

^_^

パリタクシー公式サイト



このデジタルサイネージ、今映画館にいくと見られますよ!!

『交換ウソ日記』


同日公開の『1秒先の彼女』クドカン脚本ですが、

この元ネタって韓国映画じゃないですかね?リメイクだとはどこにも書かれていませんが…