公開から1カ月経ってしまい、やっと見に行けました。

後部座席でふんぞり返っているアフリカ系アメリカ人。と、
運転席で ちょっとイヤそうにしている イタリア系アメリカ人。が
一緒に旅するロード・ムービー。

というだけの物語ではなく、

人種差別を描いた、実話に基づくストーリーですが、
楽しく見られて 最後は爽やか。

実話であることが本当に嬉しくなるストーリーで、
脚本は3人による共同執筆ですが、なんと、その中の一人が、この運転手だった人の 息子さんです。
苗字が同じ、バレロンガさん。



劇中の二人は、共に2013年に亡くなり、生前から映画化を目論んでいた息子さんにて、二人のインタビュー動画をたくさん、資料として撮っていまして、

後部座席にいるピアニスト氏のたっての要望(自分の生前には映画化しないでほしい)のために、亡くなってから映画化に着手しました。

小さい頃から、この2週間の運転手生活の話を聞かされていて、ずーっと映画化をあたためていた企画というわけです。

それほどまでにして、描きたかった物語。人々に伝えたい物語。当然だなと思いました。とても心温まるストーリーだからです。

しかし、アカデミー賞 最優秀作品賞をこの作品が獲った時、
違う作品『ブラック・クランズマン』で作品賞にノミネートされていて 会場に居た スパイク・リー監督が
怒って帰っちゃった。という話が伝わってきた通り、

白人が作った「感動ストーリー」にNOを突きつける スパイク・リーの気持ちは 当事者の方々には充分理解できるだろうとは思います。昔々の話では有りますが、未だ人種差別が全く無くなったわけでは無いらしいからです。

しかし、ピアニスト役の俳優さんは、映画パンフに載ったインタビューでこのような内容を話しています、

スパイク・リーの映画を見たがらない層もいるし、コメディ仕立ての映画なら 同じ差別を扱った作品でも見てみようかなと思う人達がいて、見てみると いままで思いもしなかったことを考えるかもしれず、そのことにはとても価値があると思っている、と。

確かに、ヒット作になりたくさんの観客に見てもらうことが 世の中により大きな影響を与える、というのは 俳優さんなら誰でも考えることでしょうね。食わず嫌いがあまり居ないような 大衆的な作品の価値は確かに有るわけです。

日本人にも他人事ではありませんし。私たち有色人種が主張しなければならないことは 人間を中身でなく 見かけや自出で差別する社会を 変えて行くこと。諦めないことです。

しかし映画はコメディ映画でもあり、時折笑いが巻き起こります。
あまり小さなお子さん連れが居なく、大人の観客ばかりなので、
土日は昼間2回、平日は仕事帰りの夕方に1回、という上映頻度のようですね。でも
みな映画好きで熱心な 良い客層で、シーンと静まり返って上映が始まりましたが、ストーリーに集中して見る事ができ、
60年代のニューヨークのイタリア人家庭や、
南部の州への演奏旅行に、私も2時間の間 行ってこれた気分になりました。

名の知れたキャストは 2人以外には、主人公の美人の奥様を演じる女優さんぐらいで、あとは大体無名のキャストらしく、

なかでも、主人公の家族の 叔父や弟役の役者さんは 脚本家の家族。つまり実際のこの主人公の親戚である役者さん達なんですって笑。

私は 当たり前のように手料理を含む家事全般をこなす 働き者のイタリア系ママさんや、頻繁に集まってはトランプなどやって いつもワイワイ賑やかにしている イタリア家族の男たち(暇を見つけては 大食いフードファイトもやっちゃいます)などに興味津々です、
イタリア語なまりの英語を話し、家族ではイタリア語会話もする彼ら、どこかアジア系アメリカ人にも通じるものがあり、親近感が湧きますねぇ…

主演のビゴ・モーテンセンは 「ロード・オブ・ザ・リング」に出演し有名になった俳優さん。
苗字からも分かる通り デンマーク系のパパを持ち、 イタリア系の血筋では全くありません、地毛は金髪ですが、ブラウンに髪を染めて演じています。
筋骨隆々な用心棒役を得意とするため、この役には彼しかいない!と 監督に何度も口説かれて、脚本を気に入ったこともあって 役を受けましたが、

イタリア系の素晴らしい俳優はたくさんいるのに、自分が演じていいのかなーと 気が引けて 初めは何度も断っていたんだけど、
以前 ドイツ人(精神科医のフロイト)の役を演じたことがあったため、今回もその要領で役作りしようかなと考えたそうでした。


2016年の「ムーンライト」で初の、さらにこの映画で 2度目のアカデミー賞 助演俳優賞を受賞した ピアニスト役の マハーシャラ・アリは
40歳になってから良い役を掴んだ、遅咲きの俳優さん。
まだお子さんが2歳にもなってなくて、家庭人としても忙しそう。
(こちら)でローリングストーン誌の長いインタビュー記事が読めます。


2019年のアカデミー賞3冠の名作、日本人もたくさん見に行くべきだ!と思っております。オススメです✨