素敵な映画でした。

1人暮らしの寂しい老人がいる。

毎日毎日、朝起きて、重たい体をベッドから起こし、

歯を磨いて、カレンダーに×をつける。

その平凡な毎日がつまらなく、寂しく。

クリスマスイブに死のうと思っている……?これは後で知る話。


そんな彼が恋に落ちる。

恋というのは何物にも代えられない力がある。

明日の夜、初デート。

そうなると、彼はもう朝からドキドキである。

それだけで平凡な日々の色が急に変わる。

そして、デートもうまく行って、

交際が始まる。

その恋はすべてがうまく行っているのだが、

見ている観客は妙に不安にさせられる。

何か裏があるようなのだ。

その女に騙されている?

でも、あんな老人騙しても何の得にもならない。


単純なラブストーリーかと思って見ていると、

その老人、ロバートが毎夜見る夢が変な作りである。

赤と基調とした色と光と線で表された、

この老人たちの静かな恋愛ストーリーには似つかわしくないギトギトした美しくない映像。


その答えはしばらくすると分かる。


しかし、この観客を騙しまくる作り。

私は好きなのだ。

芝居は、観客を騙し続けることで、観客を厭きさせない。

観客は、眼が離せなくなる。ばかりでなく、

次どうなるんだろう?と休む間もなく、退屈するまもなく、

引き込まれていく。

次が見たい。

これがドラマにとても必要だと私は思っている。

私たち役者も心がけてやらなければならない重要なことだ。


さて、このドラマの落ちは、

非常にシリアスにやってくる。


ロバートは、ある日すべての事実を知らされる。

その時、自分がそこまで病気のためにすべての大切な記憶を失っていたことに気づき、

苦しむ。

そうなのだ、

気づかなければ幸せだったのに。

事実を知ることは辛いこと。の時がある。

だから、

最愛の家族たちは、彼に嘘をつき続ける。

「嘘」とはそういうモノだ。


この映画の原題は、Lovely,still

上記、
邦題は、冴えないが、

明らかにストーリーから作り出されたこの邦題は、

この映画のテーマをそのまま言い得ている。


恋の素晴らしさ、

家族の素晴らしさ、

優しさ。

そう、本当の優しさ。


当初、武骨な老人だったロバートが笑顔になっていく。

メアリーとデートをして、二人がそれぞれ微笑んでいる。

いやでも見ている私たちの顔もほころぶ。

それはそれは物凄い力がある。


いい作品を観られた。

ま、気づけば哀しいラブストーリーなのだった。


ps:ロバートは毎朝、歯を磨いて薬を飲む。

  歯を磨く時に、デンタルフロスを使う。

  これがアメリカ人だ(西欧人と言ってもいい)

  口の中をきれいにする。

  日本の男性、特に中年以降の男性に学んでいただきたい! 

  歳をとればとるほど、ジェントルマンを心がけて欲しい。