たまたま続けてとってもよく似ている映画を見たので、少し比較。
これは、2009年の日本映画
そして先日観た2007年ハンガリー映画『人生に乾杯!』と似ているところが凄く多かった。
こちらは、若い男性と少女が主役
脳腫瘍であと数日の命と言われたフリーターの男と
末期癌で余命僅かの少女が、病院から逃亡する話。
お金がないので、たまたま盗んだ車のダッシュボードに入っていた拳銃で強盗をする。
次に銀行強盗をする。
そして次に車のトランクから大金を見つける。
ある企業が裏金に使う予定だったお金で、
二人は、警察だけではなく、その企業の社長?(やくざにしか見えないけど)からも命を狙われることになる。
男は、少女に海を見せてあげようと病院を抜け出たのだが……
途中、警察とのやり取りがあり、逃げ延びるあたり、
当然、刑事はとってもおバカさんに作られている。
こちらの刑事は、三浦友和さん。つまりおじさん。
たまたま『人生に乾杯!』の感想で書いたが、
日本の映画は、海に行く話しが大好きです。
海に囲まれているから仕方ないような気もするけど、
海にロマンを感じる人が、この国にはそんなに多いの?
ハンガリー映画では、逃亡する妻が、最後の言葉のように「海が見たかった」と言った。
ハンガリーには海がないから...
「海が観たい!」という言葉の意味はかなり違うとは思うが、
そして、海を見られるずに死を選ぶ夫婦。
そして『ヘブンズ・ドア』では、予想通り、海を見た。
その海は、明るくなく、風が強く、主役の女優さんの髪で顔を殴りまくり、
私にはとってもロマンチックには見えなかったけど、
それでも日本人は海が好きらしい~。
因みに私は、日本のあの海を見たいとは取り立てて思わない。
実際、もう砂浜に足を向けるコトはほとんどない。
そして、あの強風が何よりも好きではない。
だから、あそこにロマンが求められないのだろう。
最後にそれを達成させてあげるか、
それとも達成できずに映画を終わるか、
作家としては悩むところだと思うが、
ひとつ非常に重要だと思っているコトは、
作家は、全てを描いてはいけないということ。
説明しすぎてはいけない。
時々、作家や監督の描きたいものをツラツラと描くために、
後半無駄に長くなっている映画や芝居を観ることがある。
これが非常によろしくない。
そういった意味でも、『人生に乾杯!』は潔かった。
そして、もうひとつ、
『人生に乾杯!』は主演が老夫婦であったのに対して、
こちらの映画では主演が若者であること。
これは比較するべきではないのかもしれないのだけれど、
どうしても日本社会が若者中心になりすぎていることとも関係があるように思えてならない。
ドラマとしては、当然老夫婦を描いた方がドラマになる。
若者の感情はストレートだが、
老人の感情は複雑である。
であるから、
ドラマとしては、
多くのヒダを描ける老人(大人)を描いた方が、
当然、奥行きが出て、
深みのある作品に仕上がる。
一番顕著に現れていたのが、
両作品で、ホテルで豪遊するシーンが出てくる。
強盗をやったりして大金持ちになっている逃亡するカップルが、
高級ホテルの一室で豪遊する。
これが極端に違う描き方になっている。
『人生に乾杯!』では、
お洒落をした老夫婦が、レストランでディナーを食べる。
その効果であろうと思われるスーツ姿は、少し成金趣味であるが、
料理は、美味しいものを少し食べるだけ、
そこで二人は少し喧嘩をするが、
そこに、夫が用意した妻への70歳を祝うケーキが出されるという趣向。
少しお洒落で、少しロマンチック。
それに対してこの『ヘブンズ・ドア』では、
高級料理を部屋に運ばせて、食べまくる。
若いのだから、量的に多いのはまあいいのかもしれないけど、
その前に男性が、シャンパンをボトルでがぶ飲みしている。
その後、有り余る食材を並べて食べまくる。
それが、どうしても美味しそうに見えない。
ある意味、
死を前にした、将来に希望を持てないカップルが、
強盗によって得た金で豪遊する。
その中に、微かな美しさや喜びが見えた方が救われるのだが……
若者たちのホテルでの豪遊には、羨ましさをひとつも感じない。
ただ、彼らの暴力的な寂しさを描きたかったのかなぁ~?
そんなわけで、
少し雑な造りに感じてしまったこの映画でした。
決して悪い映画ではないのだけど、たまたま直前に見た『人生に乾杯!』という映画が素晴らしかったので、
そして、ひどく似ていたので比較してみました。.....あしからず