思い立ったが吉日と
なにも考えず岩手へ出掛けて
木蓮の枝先に
春が待っていたんだっけ
岩手県平泉、中尊寺
あれがいろいろな変わり目で
転機、というか、節目、というか
仏様の手のひらには
水掻きがついている
すべてを救ってくださる、ということ
中尊寺のご本尊の水掻きは
それはそれは大きくて
自分の手のひらと見比べて
恥ずかしいような
安心したような気持ち
木造の本堂と、お線香と
深い森林のにおいがしたんだった
気仙沼を歩いて
東京に帰った
岩手へ出掛けて
やっぱりよかったなあ
と、今、仕事の合間にふと思う
なんであの時、そんな遠出を、ノープランで、突然決行する気になったのか
岩手へ呼ばれていたんだな
ほんとうにいい旅だったから
たくさん
与えられて今がある
それでも自分の手のひらは小さくて
なんにもできずに座っている
あたらしく生きたいと思った
もっと次へ
もっとあたらしく
壊しても壊れないものだけを
つぎの時間へつなげていけばいいと
そんなふうに思うようになった
それがちゃんと
積み重なるってことを
今は信じてみたいのです
脈略なく
仕事に戻ります
千波有卯助