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※本記事には一部過激?な表現が含まれます。ご了承ください。

 

・月夜の光

 

俺たちの中を引き裂くことなどできない、決して、誰にも...

 

斉藤亜希人は心の中で繰り返した。

 

最近、悪夢を良く見る。

 

一昨日は水の中に沈んでゆく夢、その前の晩は、人を手にかけてしまった夢、そのまた前の晩は電車に轢かれる夢...

 

特に機能の夢はとても恐ろしかった...

 

大切な人が遠くに行ってしまう夢。

 

愛する人が離れていってしまう夢。

 

夢の中で亜希人は顔を布で覆って雑巾がけをしていた。

 

ポケットからスマフォが落ちる。

 

低い位置から落としたのにも関わらず、それはあっさりとひび割れた。

 

画面が映る。

 

待ち受けの画像は塚原海とのツーショット。

 

俺にとって一番大切な人。

 

手放したくない、誰にも渡したくない。

 

2人の仲を引き裂くかのように、液晶画面のひびはスマフォの右上から左下にかけて入っていた。

 

そう、丁度、これからの2人の運命を象徴するかのように...

 

海から何件ものラインのメッセージが来ていた。

 

俺のことを心配してくれている。

 

海のところに行かなきゃ。 戻らなきゃ。

 

そう思ったところで、目が覚めたんだ。

 

そう、夢の中では現実と立場が逆転していた。

 

俺の愛人である海は現在病院で寝たきりの状態だという。

 

何でも学校から帰る途中に歩行者用信号が青にもかかわらず突っ込んできた車に跳ねられたそうだ。

 

未だに信じられない。

 

悪い夢でも見ているのではないかと思う。

 

だが、学校帰りに病院によるとやはり海は植物人間のように横たわっている。

 

何でだよ、何で海がこんな目に...

 

心の中で何度も呟く。

 

楽しかった日々を思い出す。

 

2人でじゃれ合った日々。

 

初めて唇と唇とを重ね合わせた時のこと...

 

今になって思えば海の発する言葉はどれも美しかった。

 

運動神経は壊滅的だけれど、勉強は良く出来て、愛嬌のある可愛い瞳。

 

運動が得意で勉強が大の苦手である俺とは対照的だ。

 

そんな俺たちが付き合い始めたのは丁度2年ほど前のことだ。

 

この関係がいつまでも続くとは思っていなかった。

 

いつかは終わりが来る時に備えて、2人の時間を最高のものにしようと思った。

 

けど、こんなのって、ないよ、、

 

亜希人はその晩、外の景色を見て1人寂しく泣いた。

 

その晩は満月の夜だった。

 

思わず海の回復を月に願った。

 

祈りは人間に託された、最後の手段だ。

 

そういえば、海が言ってたことがあったっけ。

 

「辛い時でも月を見上げると元気が出てくる」って...

 

2人の様子を見ていた平林莉子は彼らに目を付けた。

 

「永遠の愛なんてないのよ。どんなに強い愛もいずれ終わりを迎える。あんたたちの不幸、この莉子が奪ってあげるわ。」

 

亜希人と海、両方の心の中から不幸を奪う。

 

亜希人の心の中にはほのかと恵理、海の心の中には梨乃と湊音が駆けつけた。

 

ほのかが不幸の残骸にマジカルレンズをあてる。

 

明らかになる2人の関係と訪れた悲劇。

 

不幸の残骸は特に暴れる様子もなく外に出て行こうとする。

 

攻撃をしようとする恵理をほのかが手で制す。

 

「行かせてあげようよ。」

 

恵理が黙って頷く。

 

一方、海の心の中では梨乃がミラクに頼んで、マジカルレンズを使って不幸の残骸が生まれた背景を見ていた。

 

亜希人と海の関係を理解した梨乃は「可哀そうにね。今、楽にしてあげるわ。」と言って弓を構えた。

 

湊音がそれを制す。

 

「待っててあげましょうよ。」

 

梨乃は少し不満そうな顔をしたが、黙ってそれに従った。

 

一ノ瀬海翔が姿を現さないので、心なしかいつもより機嫌がよかったという事情もある。

 

暫くすると海の心の中に亜希人の心の中の不幸の残骸が入ってきた。

 

2つの不幸の残骸は向き合うと、風のように静かに消え去った。

 

「あの子たちにとっては、2人でいることが一番の幸せなんだよ、きっと」

 

それを見たほのかが呟く。

 

「これで一件落着ってわけね」、と梨乃。

 

「なんか拍子抜けしちゃいましたね」、と湊音。

 

4人は顔を見合わせて笑いあった。

 

亜希人は寝る前に満月を見ながら思った。

 

この先の未来、どんな試練が待ち受けているかはわからない。

 

だけど、俺たちならきっと大丈夫だ。

 

俺は海のことを信じてる。

 

彼なら絶対、俺より先にあの世へ行ったりしない筈だ。

 

「未来はきっと明るい」、少し冷たい風を肌に感じながら、明日の自分に向かってそう言い聞かせた。

 

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