「フェルド様、これを。」、ディプラ・ボンザがフェルドのもとに跪く。
フェルドは不気味な笑い声をあげて言った。
「ボンザ、良くやった。これでこの世界は我々サーパスのものになる。我がサーパス界の頂点を治める王として君臨し、人間を1人残らず滅ぼして新是よう。お主は我のために良く働いてくれた。褒美に何か一つ願いを叶えて新是よう。」
ボンザは静かに言った。
「では、ルド・ミンナとゴジパ・ボブジの2人を生き返らせてください。」
「分かった。出来るだけのことをやってみよう。」、フェルドはそう言うと目を閉じて想いを強く念じた。
空中から光が無数に出現し、それが2人の人影へと姿を変える。
ボンザの願いは叶えられたのだ...
その頃、莉菜は大学生のような面影を瞳に持った少年の怪我の手当てをしていた。
幸い、今日は父親の仕事帰りが遅い日なのだ。
「そんな得たいの知れない者を助けて大丈夫なの?」と美桜には言われたけれど、莉菜の性格上困っている人を放っておくことはできない。
この人の怪我の手当てに人間の薬が効くのかどうかはわからないけれど...
1時間ほどすると彼は急に飛び起きた。
そして私たちの方を見て言った。
「お前ら、人間だな。人間は俺の手で全て葬り去る。」、そう言うと彼の目は紫色に光った。
しかし、次の瞬間、彼は腕を押さえた。
まだ、傷のダメージが残っていたのだ。
「ミラクルトウェルブ、トランスフォーメーション!」、変身の掛け声が聞こえた。
その方向を見ると美桜が既に変身を終え、早くも戦闘体勢に入っていた。
「ちょっと、落ち着いて。」と莉菜。
美桜は、「落ち着いて何かられないわよ。コイツは人間の敵なんだよ。」と言った。
「でも、彼は日本語が話せる。2人とも一旦落ち着いて、冷静に話し合おう。」
莉菜の呼び掛けに2人とも半ば賛成したようであった。
美桜が変身を解除した。
私たちは彼の話を一通り聞いた。
彼がエミル・ピキータという名のサーパスだということも、人間に復讐をするためにアドバンスフォーに加入したと云うことも...
莉菜は青年の話を最後まで聞いてから言った。
「そっか。今まで辛かったよね... でも、復讐は何も生まないよ。した側もされた側も虚しくなるだけ。だから、サーパスと人間が仲良くできる道を探そうよ。あなたはもう1人じゃないんだから。私たちが着いてる。」
エミル・ピキータは空の一点をぼんやり見つめながら呟いた。
「サーパスと人間が仲良くできる世界か。実現できれば面白いだろうな... だが、もう手遅れだ。俺は別の道をえらんでしまった... ありがとう、ミラクルトウェルブの戦士よ、もう人間に手出しはしない。」
そう言うと、ピキータは私たちの目の前から姿を消した。
部屋に強い風が吹き込んできた。
家が揺れるほど強くて、でも、静かで爽やかな風だった...