俺たち4人、名付けてアドバンスフォーは西園寺かずとと五十嵐ゆりなを倒すため、計画を立てることにした。

 

フェルド様から与えられた時間は一週間。

 

この期間に俺たちはあの2人を完膚なきに叩き倒すための計画を立てなければならない。

 

「彼を知り己を知れば百戦危うからず」という言葉がある。

 

これは敵と味方のことを良く知った上で戦えば、何度やっても敗れることはないという意味である。

 

俺たちは味方のことはお互いとても良く知っている。

 

また、この前の闘いで西園寺かずとと五十嵐ゆりなの情報も知ることができた。

 

その情報をアドバンスフォー全体で共有する。

 

奴らを倒すための計画にも寸分の狂いもない。

 

あとは奴らを始末するまでだ ...

 

1週間後......

 

西園寺かずとは仕事を終えると、一直線に家に向かった。

 

車から降りて、荷物を出そうとしたところで視界がボヤけた。

 

蛇が辺り一面にうじゃうじゃいるのだ。

 

一匹や二匹なら別に気にしないが、山積みになった蛇を見ていると流石に気が滅入る。

 

かずとが一瞬だけ怯んだ時だった。

 

地面に大きな穴が空いてかずとはその中に落ちていった。

 

ゴジパ・ボブジとエミル・キピータの2人が穴の上から砂をかける。

 

「意外と拍子抜けだね。」とゴジパ・ボブジ。

 

「確かにな。こんなあっさり決着が着いてしまって大丈夫なのか?」とエミル・キピータ。

 

2人が出会ったのは1年前のこと。

 

俺が地獄のような修行を行っている際、最初に声をかけてくれたのが彼だった。

 

「人間が憎いかい? もし良ければ僕たちの仲間になって一緒に人間を滅ぼさないかい?」

 

彼が最初に俺にかけてくれた言葉は今でも忘れない。

 

ゴジパ・ボブジは貧弱な俺とは違い、サーパスとしての能力も高く、皆から愛されていた存在。

 

そんな彼が何故人間を憎むようになったのか。

 

そこには俺たちサーパスの宿命とでも言うべき理由が存在したのだ。

 

彼は元々俺とは違い人間社会に適応できた奴だった。

 

人間の友達を多く作り、充実した日々を送っていた。

 

何故彼が人間社会にそこまで適応できたのか。

 

元の能力が高かったからというのももちろん一因ではあるが、そこにはもっと大きな理由が存在する。

 

彼は、何と幻術を使うことができたのだ。

 

ありもしないものはさもあるように見せたり、実際にはないものをあるように見せる能力。

 

先程の山積みの蛇も彼が生み出した幻に過ぎない。

 

これにより彼は自分の正体を隠すことができていたのだ。

 

だが、そんな上手い話も長くは続かなかった。

 

事態が一変したのは彼に彼女という存在ができてからだ。

 

容姿や性格が良く、運動神経も良かった彼は、人間の彼女を作ってしまったのである...

 

最初はごく普通のカップルだったが、距離感が近づくに連れ、彼女は彼の正体に気づいていく。

 

それが彼女の友達たちに伝わり、噂が学校全体に広まる結果となった。

 

当然、彼は孤立を深めていく。

 

更に、時が経てば経つほど、彼への攻撃はエスカレートしていった。

 

これが彼が人間が嫌いになった理由である。

 

人間に報復し、サーパス中心の世界を作るのが彼の目指すところである。

 

ゴジパ・ボブジの凄い点はサーパスとしての能力が複数あるところだ。

 

代表的な彼の力は幻術と土の力。

 

だが、それ以外にも3つくらい別の隠し球を持っているそうだ。

 

それが何かは俺ですら知らないのである。

 

複数の能力がある分1つ1つの能力が他のメンバーに比べるとそこまで高くないという弱点はあるが、総合力という側面では群を抜いている。

 

また、彼は緻密な計画を立てることも非常に得意だ。

 

西園寺かずとがヒューマノイドエンハンスシステムを装着できない状況を狙って彼を倒そうと計画を立てたのもボブジである。

 

ボブジはサーパスとしての総合力の高さや計画の緻密性からフェルド様にも恐れられている男なのだ...

 

ともかく、これで俺たちの仕事は終わった。

 

あとは、ルド・ミンナとディプラ・ボンザの2人が五十嵐ゆりなを倒すのを待つだけだ...

 

サーパス界の伝説のカップルであるあの2人がどうやって五十嵐ゆりなに立ち向かうか楽しみだ...