「攻撃力良し、耐久力良し、防御力良し。」
実験室に声が響き渡る。
「実験終了。もう良いわよ。」という声と共に1人の男が装具を取り外して外へ出てくる。
「さすが西園寺さんね。扱い方が完璧よ。」、そう言ったのは警視庁一課の1人、伊藤心美。
警視庁ではある実験を行っていた。
それはエンハンスシステムと人間との融合。
エンハンスシステムを人間の意志の力で動かすことが出来れば、サーパスに対抗する強力な武器になり得る。
その適任者として、エンハンスシステムの発明者であり、身体能力も抜群である西園寺かずとが抜擢されたという訳だ。
むろんかずとはアノマニスであり、人間ではないのだが、そのことを知る者は警視庁の中には誰もいない...
更に言えばかずとはどちらかと言えばエンハンスシステムの発明者というよりはむしろ人工生命体りあの発明者だ。
エンハンスシステムはかずとによって作られた人工生命体である彼女によって作られたのだから...
実験室の外には彼女の空虚な目がある。
焦点が合わず、どこを見ているのかも、何を考えているのかもわからない...
人工生命体は意思を持たないからだ。
姿・形が人といくら似ていようと所詮は作られた存在。
つまり機械のようなものなのだ。
どんな言葉をかけても同じような反応をする。
彼女のような存在は果たして生きているというのかとかずとはふと思った。
その時、室内にサイレンが鳴り響いた。
これは、サーパスが出現したというサイレンだ...
直近の連続行方不明事件は子どもが狙われるということから、子どもが多い場所に見張りをおいていたのだ。
見張りをしていたのは一般市民に変装したAI、エンハンスシステムだ。
サーパスが出現したら通知を出すように設定していたのだ。
サーパスが逃げないようにエンハンスシステムが気を引いてくれている筈だ。
かずとは車で現場に向かった。
車に乗りながら、例の女、五十嵐ゆりながサーパスは女の姿をした幽霊のような特徴があるということを思い出した。
それにしても、彼女のことはまだ不明な点が多い。
調査を続けているが、未だ名前と年齢と住まいしか情報が分かっていないのだ。
それ以外に分かっていることと言えば、彼女もまたAランクのアノマニスであり、3つのサイコキネシスが使えるということ。
そのうち2つは高速移動と雷の力であるということのみだ...
そうこうしているうちに、彼は目的地に着いた。
再話未だサーパスはその場にいた。
あの女が言っていた通り、見た目は女の姿をした幽霊だ...
かずとは車から降り、エンハンスシステムを装着した。
さあ、今こそエンハンスシステムの威力を見せる時だ!