純花のところにカラスの姿をした少年がやってきたのは5年生になってはじめて登校する日の朝のこと。


誰かに耳元で囁かれた気がして寝ぼけながら目を擦ると傍に1羽のカラスが立っていた。


最初は夢かと思ったが、彼の話を聞いているうちにこれは現実なのだとわかった。


少年は純花に特別な何かを渡すことはしなかった。


その代わり、「残りのシサーガたちと闘う覚悟は出来ているか。また前みたいな目に逢っても大丈夫か。」と尋ねた。


純花は大きく頷き、「もうこの前みたいなことにはならない。もしそうなっちゃってもみんながいてくれれば大丈夫!」と笑顔で応えた。


少年は安心したような表情を浮かべると空の彼方に向かって飛び去った。


小学5年生になってクラス換えがあった。


4年生の時とクラスの雰囲気や人間関係もだいぶ変わったけれど、純花にとってはその環境に馴染むのは容易いことだった。


もともと友達も多く、誰とでも仲良く出来るのだから。


ある時、5年生になって仲良くなったうちの3人と純花、合わせて4人で、純花の家で遊ぶことになった。


3人とは以下のメンバーである。


杉本ありさ… 純花の後ろの席にいたこともありすぐに打ち解けた。背が高く、髪の毛が短い。スタイルが整っていて大人びて見える。普段ははっちゃけているイメージが強いが時々とても深刻な表情をすることがある。


安藤かほ… いわゆる典型的なぶりっ子。上目遣いをする癖がある。長い髪が特徴的。普段の態度や行動から彼女のことを嫌っているクラスメイトも多いが、純花はこのようなタイプとも仲良くすることが出来る。


如月千夏… しっかり者でクラスのリーダー的存在。勉強、スポーツ、音楽など出来ないことはなく、ルックスも良い。家は5人兄弟であり、弟や妹の面倒を良く見ている。クラスメイトの誰とでも仲良く出来る。


また、純花はクラスの男子ほぼ全員とも仲良くなっていた。


特に席が隣の一ノ瀬巧とは付き合いが長い。


彼はスポーツ万能で容姿も良く、勉強もそこそこ出来るといったいかにもモテそうな男子なのだが、そのような話は今は省くこととする。


とにかく、ありさとかほと千夏、それから純花の4人で遊ぶことになったのだ。


かほとありさは仲が良くない。


この4人の関係性が程よく保たれているのは純花と千夏の頑張りによるものだ。


家ではトランプやアクセサリー作りをして遊んでいた。



 その頃、シサーガたちは…


ベール、バルク、ディノケの3人がブノケに向かって罵声を浴びせる。


3人ともブノケがフィーチャーストーンを奪えなかったどころか、綾崎梨菜とかいう大した力を持っていない少女を倒すことすら出来なかったことに苛立っているのだ。


「あんたはもう終わりね。」とバルクが言う。


「待ってくれ。今度フィーチャーストーンは必ず奪う」と必死に叫ぶブノケに対し、ベール、バルク、ディノケの3人が無言で攻撃を加える。


「シサーガは個人主義だ。集団で1人をぶちのめすなんてことがあっていいのか。覚えてろ。」と、ブノケが最後の力を振り絞って叫び、燃えながら崖の下の海に落ちていった。


ベールが「これで邪魔者が1人消えた。誰が一番早くフィーチャーストーンを奪えるか楽しみだな。」という。


「一番はあたしよ。」


「いや、お前には絶対渡さねぇ。」


とバルク、ディノケも闘志を示す。


もう生き残っているシサーガは自分たち3人だけだ。


誰が最後まで生き残れるのか。


世界を支配する力を手に入れることが出来るのか。


生き残ったシサーガたちの命とプライドをかけた闘いはこれから始まる。