第3章 多様な戦士

 

・第32話 恋心の芽生え

 

「彼女が欲しい。」、小西牧人が口を開いた。

「お。お前もついに恋心が芽生えたか。この前の女以外が狙いだったら応援するぜ。」と雄二。

「お前ら、俺を良く見てろ。ここは男らしく難破してやるぜ。」

牧人が堂々と歩きだす。雄二たち4人が息をのんで見守る。

牧人の目はある一点に定められていた。

「あの女、弱くて優しそうだな。」と雄二。

牧人が見つめていたのは中原瞳子。隣には田村好美がいた。

「美しい顔だね、お嬢さん。俺と一緒に昼の紅茶を一杯どうだい?」

「牧人の奴、相変わらずキザだなぁ。」と雄二。

瞳子は牧人の方を見てキョトンとした顔をした。瞳子の前に好美が立ちはだかる。

「昼から堂々とした難破ね。瞳子があんたみたいなのと釣り合うわけないじゃない。」

「残念。じゃあ力づくで奪い去るしかないね。」

牧人が腕を伸ばして瞳子の腕を掴もうとした。好美が彼の身体を空高く蹴り上げる。牧人の身体は中高く飛び、鈍い音を立てて地面に落ちた。

「あの女、すげぇな。」と雄二。

「何なんだ、あいつは、いきなりこの俺を蹴り飛ばしやがって」、牧人がゆっくりと立ち上がる。

「あの女も、結構可愛かったな。」、彼の心は瞳子の姿から好美の姿に目を奪われつつあった。

「なんだ、あの目は」と昇。

「ありゃぁ、恋した男の目だ。」と雄二。

「お前ら、この前襲おうとした女のことを良く調べろ。俺もあの美少女を手に入れるぞ。」

そう言った雄二を健吾が睨みつけた。雄二は目線を逸らす。グループの仲の不和は以前よりも更に高まりを見せていた。噂をしたところに例の少女、曽山心菜が通りかかった。5人は魔法少年の姿に変身して彼女のあとを追った。家では父親と母親、そして彼女の3人で生計を立てていることが分かった。母親は薬剤師、父親は平凡なサラリーマンだ。家の中には美容のためのアイテムが揃っていた。彼女は日常生活を覗き見した上でも謎の多い人物だった。一日中自分の姿を鏡で見ているのだ。趣味などはないのかも気になった。そのミステリアスさが、余計魔法少年たちの心をわしずかみにした。雄二と健吾は、どんな手を使ってでも彼女を自分のものにすると誓った。2人は、同時に心の中で呟いた。

「絶対に、彼女を、曽山心菜を、あいつにはやらない。」