久しぶりにMotown全盛期の数々の名曲をCDで聴いたりYoutubeで観たりしたのですが、60年代半ばのMotownナンバーこそ究極のポップス。改めて確認しました。

 

その中でもTop of topsな名曲がFour Topsの"I Can't Help Myself (Sugar Pie Honey Bunch)" (1965)。当時のマナーにしたがって2分46秒という短い尺。AメロもBメロもブリッジもサビも前サビも大サビもない。ただひとつのメロのかたまりがあるだけ。第1コーラスの歌詞で言えば

Sugar pie, honey bunch
You know that I love you
I can't help myself
I love you and nobody else  

これだけ。このフレーズが延々と繰り返されます。

 

これ以上ないほどポップなメロではありますが、改めて聴いてみるとどこにもヤマがない。淡々としている。盛り上がりも盛り下がりもなくフラットなメロディで流すだけ。現代の基準でいえば異様にシンプル。それでも最高にキャッチー。この頃の主力ソングライティング・チーム、Holland-Dozier-Hollandの比類なき才能の発露であります。

 

本作と並ぶHolland-Dozier-Hollandの名曲にThe Supremesの"Baby Love"(1964)がありますが、これもまたワンメロディーの2分36秒。フワーッとしたメロのかたまりがひとつあるだけ。「構成」というものが成り立たないほどシンプル。使われている音のレンジが狭い狭い。どこにも「聴かせてやるぞ!」という要素がない。異様にナチュラル。で、たまらなくポップでキャッチー。Diana Rossが「ウーウ、ウー」というだけで耳と心が鷲づかみにされます。

 

Motownの主力ライターとしてこの時代の双璧はSmokey Robinsonであります。この人の曲もヒジョーにシンプルにしてキャッチーなのですが、例えばTempsの大ヒット曲"My Girl"や”Get Ready"を聴くと、一応曲にA→Bという「構成」があります(ただし、「ハイここからサビですよー!」という下品なものはない。これ大切)。しかし、Holland-Dozier-Hollandにはそれもない。ひたすら淡麗にしてピュア。まざりっけなし。何も足さない。何も引かない。それなのにコクが深い。飽きがこない。何度でもいつでも楽しめる。極上のコンソメスープの如し。

 

いつの時代も、ホントに優れたクリエイティブというのは、こういうものなのでしょうね。すなわち、「シンプル」「ナチュラル」「狙ってない」「それ一発」「流れていく」。

 

もうこういう曲は誰も創れないのいではないでしょうか。