まだ知らぬ音楽との出会いを求めていつもスタンバイしているわけですが、Vintage Troubleのメジャーデビュー盤"1 Hopeful Rd."、やれブライアン・メイが激賞したブッカーTが一発で気に入ったとか、やたらと評判がよろしゅうございます。前から気になっていたのですが、AC/DCのツアーに帯同してオープニングアクトをやっているという話を聞いたのが決定打になって購入、聴いてみました。


1 Hopeful Rd./Vintage Trouble
これがそれ。


1曲目が流れてきたとたん、「こりゃダメだ!」と思ったのですが、この曲が僕の嫌いなタイプだっただけで、その後の曲は確かによろしゅうございました。長打とはいえませんが、クリーンヒットであることは間違いなし。僕の場合、新規音楽打率は1割ぐらいなので、上出来の上玉であります。


音楽そのものにあっと驚く凄さや革新性があるわけではありませんで、むしろその逆。僕のスキな70sロックをオーバードライブして、もはや60s、いやことによると50s、モータウンないしはスタックスを丸ごと髣髴とさせるヒジョーに古い曲調です。ロックよりのR&Bでボーカルの粘度が高い高い。Wilson Picketの如し。


ただし、録音は現代のBluenoteのそれ。とにかく音がイイ! バンドの音作りもストレートで秀逸なものでありますが、現代技術で録音されたサウンドは分離が良く、プレベの太い音が心地よいこと限りなし。楽器とヴォーカルとのバランスも最高で、バンドとしての一体感がある。音そのものはうっとりするような仕上がりです。もしWilson PicketのMustang Sallyをこの水準の録音で聴けたらそれはそれはバラシースなことでしょう。


これはこれでアタリだったのですが、自分にとってビックリするような見知らぬ音楽との出会い、それは51歳の己の身を考えてみれば、ほとんど絶望的に困難だということを知らされました。というのは、ホントに革新的というか新しい音楽だと、それは当然のことながら若い世代によって創造されるわけで、だとすると新しすぎてこっちがもう分からなくなっているのであります。たとえば、歴史的名盤とかいうOasisのをはじめて聴いたときは「なんだ、これ?」という具合で、まったく楽しめませんでした。Oasisがもう10年以上前、下手すると20年前のロック・クラシック。にもかかわらず、こっちは新しすぎて分からない、という成り行き。


その点、VTはノープロブレム。60sのロック的R&Bを素直にそのまま消化し、そこにほんの少しコードやリズムで工夫するというタイプの曲の連続であります。この辺、10年ぐらい前のNorah Jonesを知ったときに近いものがあります。昔ながらのカントリー風ジャズにわずかの新味を加え、しかも音はヒジョーにイイというパターン。これから初老期に入る僕にとっての「新しいアーティスト」というのは、このパターンの繰り返しになる予感がいたします。嬉しいような哀しいような。