さてさて、本年も現場のある仕事はすべて終了し、あとは締め切りのある原稿を自宅でユルユルと書くのみとなりました。

一年でいちばんリラックスするこの時期、どこかに出かけるとか野暮なことはせずに(どこに行っても混んでますからね)、毎年ひたすら鷺リゾ(鷺沼リゾート)という名の自宅に固く引き籠ることにしております。何をするかというと、文化系三種目。すなわち、読書と音楽と映画。ま、年末年始のみならず、普段も仕事がないときはこの三種目+1(=昼寝)に明け暮れているのですが、この時期は本格的に耽溺できるという次第。

で、本日の大当たりは映画。1972年東映作品の『銀蝶渡り鳥』。主演は梶芽衣子。





僕は癒し系のカワイコちゃんが苦手で、カッコイイ綺麗な女が大スキなのですが、その理想の究極が梶芽衣子先生戦後日本、いや昭和日本、いや日本史上、つーか東洋の歴史の中で最高にして最強のカッコイイ女性として、この数十年に渡り大リスペクトしております。

梶芽衣子主演作の『銀蝶渡り鳥』の存在はもちろん知っておりましたし、主題歌は営業車の中でもしばしば聴いておりました。ところが、"Kill Bill"の遡及的影響で知られるようになった『修羅雪姫』シリーズがどこのレンタルビデオ屋さんにもあるのに対して、こちらはこれまでとんとおめにかかることがなかったんですね、ええ。言うまでもなく『修羅雪姫』はタランティーノのみならず万人が一発でヤラれる大名作でありまして、僕も即座にDVDを購入、繰り返し鑑賞して梶の美を堪能してきました。

で、僕がこれまでに読んだ映画評では、『銀蝶渡り鳥』は『修羅雪姫』と比べていまひとつ……ということになっておりまして、わざわざソフトを買って観るには至りませんでした。

で、先日鷺リゾ至近のツタヤで鷺リゾ観賞用のDVDを物色しておりましたところ、このところなぜか昭和の邦画が続々と再リリースされておりまして(バラシースな傾向)、ありました!『銀蝶渡り鳥』がひっそりと新規まき直し復活しているではありませんか。




喜び勇んでお借りし、鷺リゾで上映しましたところ、これが期待をよどみなく上回りまくりやがる大傑作ではありませんか。いやはやビックリしました、これホント。

ストーリーは東映任侠路線の定番なのですが、テンポがよく90分弱の尺に美味しいところがギュッとつまっています。それはそれとして、気絶するほど素晴らしいのがキャスト。梶芽衣子を軸に、脇を固めるのが僕の大スキな俳優ばかり。梅宮辰夫が軽妙洒脱、全力で脱力の無意識のカッコよさ全開で本領発揮。渡瀬恒彦が刹那的なトッポいアンちゃん役でこれも超ハマリ役。梶芽衣子が勤めるクラブのママが小山明子。これがもうこれ以上の銀座クラブママはいない(いるとしても雨宮さんぐらい)という凛とした美しさ。さらには、スケベオヤジをやらせたらsecond to noneの由利徹がきっちり役目を果たします。もうたまりません。

ヤマ場の立ち回りがカッコイイのは当然として、その直前の雨の中を着物姿で殴り込みに行く梶芽衣子、シビれにシビれて落涙しました。敵のアジドの前で渡瀬恒彦と出会う。目と目で無言の会話。で、渡瀬が一言「我慢できねえよな…」。で、殴り込みに入るという、このシークエンスは東映ならではの極上の味わいがございました。



で、この映画が僕にとって輪をかけて嬉しいのは、舞台が昭和の銀座だということ。祖父がずーっと銀座で商売をやっておりまして、ガキの頃からよく遊びに行っていました。そのころの銀座の記憶が映像から溢れて参りまして、甘酸っぱ!これは銀座をよーく分かっている人の仕事ですね、ええ。ハイカラで上品、でもわりと無秩序という昭和銀座の魅力を描くことにおいて秀逸です。いまも昔も銀座はeeなあ!

あまりに深く感動したので、その後いつもよりも長めに昼寝したことを合わせてご報告いたします。