先だって久しぶりに体調をわりときっちり崩しました。数年前まで風邪をひくことなど5年に1回ぐらいしかなかったのですが、50歳直前にもなるとときどきやってきまして、しかも風邪に必ずおまけがついてきます。前回は肩が痛くて上がらなくなり、今回はお腹が痛くなって何を食べても下してしまうというありさま。人間の体はホントにうまくできてまして、こうなるとまったく食欲がなくなるんですね、ええ。何時間食べなくてもお腹がすきません。

しかも、そこはそれ、ド中年の生活にはしっかり仕事の予定が入っておりまして、普段は週末に合わせて無意識のうちに風邪をひくようにしているのですが、今回は発症したのが火曜日。これ最悪。発熱のなかうんうん唸りつつしっかり寝て翌日に備えまくったのですが、何分食事ができないので復調せず、水曜日の夜に予定されていたお楽しみ会(村田のアニキ主催の肉肉肉のバーベキューの集い)は残念ながら欠席のご連絡をいたしました。村田さん、申し訳ございませんでした。今後気をつけます。

ところが、昼にはどうしてもはずせない業務がございまして、ふらふらと営業車で出かけたのですが、人間の体はホントにうまくできてまして、自分で走っているわけではないのに、体調が悪いとクルマもゆっくりとしか運転できないものなのですね、これが。のろのろと現場到着、始まってみますとそこはそれ、ド中年は何事もないフリをして業務遂行いたしました。

で、翌日から徐々に体調回復、金曜日には早朝からガンガン仕事。食事も漸次とれるようになりまして、仕事の後にスカッとジムへ。「しめしめ、さぞかし病気ダイエットで体重は減っただろうな、どれどれ…」と体重計に乗ってみますと、79.4…。500グラムしか減ってないじゃないの?ま、いいや。

で、この週末はシルバーウィーク(世に言うゴールデンウィーク)以来の久方ぶりの2連休であります。天気も悪いということなので、思い立って鷺リゾで2泊3日の休暇を過ごすことにしました。意思決定の後、0.1秒で鷺リゾ入り。ユルユルと読書をしておりますと、まるで自宅の休日のごとし。なぜかというと自宅だから。

で、読書(『強欲の帝国』。これイイ)の途中で一休みし、タブレットでいろいろなウェブサイトをみるという愚行をしておりますと、広木隆さん(マネックス証券チーフ・ストラテジスト)の文章が。この広木さんという方の文章が大スキでありまして、やみつきになっています。異様に面白い。面白い文章を書く人は少なからずいらっしゃいますが、金融業界のアナリストやストラテジストでこういう味わい深い文章を書く人は日本広しといえども広木さんだけでしょうね、間違いなく。

で、こういうことが書いてありました。僕は知らなかったのですが、『伝え方が9割』というベストセラーの本があるそうで、「同じことを伝えるにも、言い方次第で相手の受け取り方は違ってくる」 ということが書いてあるらしい。例えば、 「デートしてください」というよりも「驚くほど旨いパスタどう?」といったほうがイイとか、そういうことらしい。

こりゃまたクダラネエ話だな…と思ったのですが、広木さんのご意見はいかに(広木さんの「新潮流」の引用)。

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はっきり言ってケース・バイ・ケースではないか。ストレートに言ったほうがいい場合だってある。伝える相手次第だろう。

◆中国の個人向け金融商品でMMFにあたる通貨基金が急拡大しているというニュースが先日新聞に掲載された。インターネットで購入できる手軽さと利 回りの高さが受け、4月末の残高は日本円に換算して約29兆円と昨年末から倍増したという。革新的な商品性で急成長したことを評価する論調である。記事に は一言も「シャドーバンキング」とか「理財商品」との言葉はないが、実はこれ、立派なシャドーバンキングである。銀行を経由しない資金の流れを、そう定義 するのであれば。

◆メディアがさんざん警鐘を鳴らしてきた中国のシャドーバンキング問題。「同じことを伝えるにも、言い方次第で相手の受け取り方は違ってくる」 い い例だ。「シャドーバンキング(影の銀行)」という言葉が不穏な雰囲気を感じさせるので、なんでもかんでも危ないもののように思われるが、そういうのは一 部のファンドに限られる。まさに「伝え方が9割」だ。

◆それにしても「驚くほど旨いパスタどう?」という文句でデートしてくれる女性が果たしているのだろうか?試してみたが誰ひとりとしてつきあってくれない。ベストセラーに騙された。「カネ返せ!」→どんな言い方にすればいいだろう?
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僕も同感ですね、ええ。だいたい「驚くほど旨いパスタ」って、どこで食べるのでしょうか。僕だったら、それが知りたくてついていく。誰か「驚くほど旨いパスタどう?」って、声かけてくれないかな。話は変わりますが、「驚くほど利回りの高い金融商品どう?」って証券会社に言われたらコワいですね。

で、広木さんも言ってますが、「驚くほど旨いパスタどう?」ってデートの誘い文句としてどう?

これ、明らかに逆効果なのでは。そもそも相手に好意があれば 「デートしてください」だろうが「驚くほど旨いパスタどう?」だろうが来るだろうし、脈がなければ「驚くほど旨いお鮨と鰻とビフテキと天ぷらとふぐ、どれでもイイんだけどどう?」でも来ないものは来ない。逆に脈があれば「驚くほど不味いパスタどう?」でも「よし、面白そうだから同行しよう」ということになるのが世の常。伝え方はこの際、どうでもイイ。

で、突然驚くほど旨いパスタが食べたくなりましたが、誰も「驚くほど旨いパスタどう?」と誘ってくれる人が現れないので、鷺リゾのキッチン(=自宅台所)で自作いたしました。

フライパンにオリーブオイルとにんにくの薄切りを入れ、後に適量の舞茸と大量のマッシュルーム(ためらわず大量に投入すること)とパンツェッタと鷹の爪を入れて炒める。強めの塩を入れたお湯でスパゲティをゆで、「これでホントに大丈夫かな?」ぐらい硬い段階でさっさと引上げ、ゆで汁とともにフライパンに入れて具材とからめにからめる。で、火を止めてから大量のバジリコの細かく切ったのを投入してさっさとからめ、お皿に盛る。

食べてみたら、驚くほど旨い。家人連中に「驚くほど旨いパスタどう?」って聞いたら、空腹だったらしく無言でガツガツ食べてました。僕も食べ過ぎて病気ダイエットの貯金を使い果たし、体重が80オーバーに。ことほど左様に恐るべきヒマな鷺リゾ生活。もう一日過ごします。チャオ!