人生の第4コーナーに入りつつある僕といたしましては、この先、できることならば自分がやりたいと思い、やる意義を感じることができる仕事だけをやりたいと考えているわけですが、心の底から全身でやりたいと思っていたことを忠実に形にしたのが「成長戦略フォーラム」。昨年の夏からユルユルと準備をしてまいりましたが、いよいよ始まりました。

これから月に1回、土曜日に開催するわけですが、初回は千代田区は三崎町のナイスなホテル、「庭のホテル」で1泊2日の合宿をもちました。



成長戦略フォーラムのメンバーの方々

先日の日本経済新聞の「経済教室」面でも主張したのですが、このフォーラムの意図と目的はこういうことであります。

これからの日本企業は新興国が容易には模倣できない「クオリティ企業」を目指すべきだ、僕
の主張です。追求すべきは「質」であり、その結果として「量」が達成される。いたずらに量を追うことで新興国企業に対抗するのではなく、差別化された独自の価値を創り、その結果として成長を実現する。これが日本と日本企業の取るべき道と考えます。

高度成長期の日本をリードした大企業の一部が失速する一方で、特定の事業領域に明確にフォーカスし、高い経営成果を実現している「クオリティ企業」が日本にはいくつもあります。
20世紀型大企業が巨大戦艦だったとすれば、さまざまな業界で第一級の「巡洋艦・駆逐艦型企業」がそろっている。早稲田大学の遠藤教授の痺れるフレーズを拝借すれば、「体格より体質」。ここにこそ日本の強みと可能性があると思うのです。


僕が身を置く一橋大学大学院国際企業戦略研究科は、優れた戦略で高い成果をあげている企業を表彰する「ポーター賞」を主催し、戦略の重要性を企業社会に訴えてきました。この「成長戦略フォーラム」は、十数年に渡るポーター賞の取り組みの延長線上にございます。つまり、戦略に優れた企業の評価と表彰からさらに一歩踏み込んで、実際に独自の戦略をもち、ユニークな価値を創り、将来の日本を代表するリーダーとなるポテンシャルを持った気鋭のクオリティ企業だけを対象に、次世代の経営人材が成長戦略を構想する「場」だけを提供することを意図しています。


成長戦略フォーラムは最初の最初から
僕が好き勝手に構想・企画・設計・実施しております。僕の仕事の領域は「競争の戦略」でして、この20数年「優れた戦略とは何か」についての考えごとに明け暮れてきました。中間的な結論は2010年に出した『ストーリーとしての競争戦略:優れた戦略の条件』にあるとおりなのですが、当然の成り行きとして、お読みいただいた方々から「どうしたら優れた戦略ストーリーを創ることができるのか」という問いが多く寄せられました。優れた戦略は組織的な分業でつくられるものではなく、結局のところ、商売全体を丸ごと構想し動かそうとする「経営者」「経営人材」にかかっている、というのが僕の確信です。

ところが、そうした意味での「経営者」は経験の蓄積と試行錯誤の繰り返しの中で「育つ」もの。「育てる」ための手っ取り早い方法論はあり得ません。それゆえ、「経営者」は古今東西、最も希少な経営資源となります。ここによどみなく挑戦しようというのが成長戦略フォーラムであります。

成長戦略フォーラムが「戦略ストーリーを構想する場」「経営人材が育つ場」を提供し、経営人材のネットワークを構築することによって、これからの日本のモデルとなるクオリティ企業の成長と進化に貢献する。これを目的に成長戦略フォーラムの運営に取り組んでいく所存でございます。めずらしく本気(マジ。「本気」と書いて「マジ」と読む)です。

1回目のフォーラムの様子はフジテレビの取材も入り、日曜日朝の「新報道2001」でも報道していただきました。日経新聞社の重原さんも取材に来ていただき、日経のオンラインで後日内容のレポートが掲載される予定です。