声がデカければそれで歌唱力があるというのはとんでもない勘違いでありまして、それならカレン・カーペンターのあの微細なコントロールやエルヴィスのロールしていく歌いまわし(何を歌ってもオリジナルになる)はどう受け止めればいいのよ!?という話が必然的に出てくるわけで。


それはそれとして、布施明や松崎しげると尾崎紀世彦の違い、それは真の意味での歌唱力であります。尾崎紀世彦の「ファースト・アルバム」は、氏の歌唱力がのっけから炸裂する垂涎の一枚。2曲目の「男の世界」のドライブ感、4曲目の「ラブ・ミー・トゥナイト」の煌びやかさ、8曲目の「太陽は燃えている」の高揚感、14曲目の「ラスト・ワルツ」のウエット感、どれをとっても極上のヴォーカル・ミュージックではありますが、とにかく深くこうべを垂れるしかないのが10曲目の「最後の恋」。このコントロールは何だ?何なのか?この世のものとは思えません。


日本クラブ歌手界の原点にして頂点、日本一歌が上手い男、尾崎紀世彦の完璧な芸風を心ゆくまで堪能できる名盤、ぜひ照明を絞って、カクテルなど飲みながら恋人とひとつご贔屓に!

尾崎紀世彦
ファースト・アルバム