僕の好みでいえば、男性シンガーとしてはもちろんエルヴィスが原点にして頂点なわけですが、女性シンガーの最高峰は間違いなくロス氏。6歳のとき、南アフリカはジョハネスバーグではじめて聴いたエルヴィスとの衝撃の出会い(Elvis on Stage)が僕の音楽に対する関心を発火させたわけですが、ロス氏はそれよりも早く、幼稚園時代から僕のヘビロテ・アーティストでありまして、カーステから流れてくる美声に酔いしれたものでした。


先日仕事で千葉方面に行きましたが、往復のクルマの中で3時間ほどゆっくりとシュープリームスを聴きました。こうしてまとめて聴いてみると、ダイアナ・ロスのヴォーカルの魅力というか彼女の歌唱の独自性は、合間合間の「うー」、「あー」、「おー」、「いぇー」、「ベイビー、ベイビー」といった間投詞の部分に凝縮されていることを確認しました。


ロス氏のヴォーカルは黒い系としては異例の軽さで、きらびやかな歌声がジワジワ・ふわふわと中空を漂っていく華やかさがたまらなくイイね!ということは前回の記事で主張&強調した通りですが、だいたいシュープリームスの、とくに初期の曲はこうしたロス氏独自のチャームが爆発するようにできているんですね、これが。


ま、因果関係は逆かもしれません。ああいう曲で世に出たから、ロス氏のスタイルができたのかも。いずれにせよ、シュープリームスはモータウンの完全企画モノでありまして、作曲チームとロス氏の完璧なフィットがあのマジックを創ったといえそうです。


シュープリームスのヒット曲を聴けばよくわかるのですが、Aメロ、Bメロ、サビ、ブリッジといった構成があまりはっきりしていなくて、ひとつのテーマとなるかなり短いフレーズをじわじわと繰り返していくだけ、とくに盛り上がるサビもなし、という淡々としたつくりになっております。で、メイン・フレーズの合間に例の「うー」、「あー」、「おー」、「いぇー」、「ベイビー、ベイビー」が入る。このような曲のありようが、ロス氏のジワジワ・ふわふわ・キラキラのヴォーカルをよどみなく際立たせていて、バラシース!


Where Did Our Love Goから始まって、Baby Love, Come See about Me, Back in My Arms Again, Nothing but Heartaches, I Hear a Symphony, 最後の曲となったSomeday We Will Be Togetherまでほとんどがこうしたタイプの曲です。とくにSomeday We Will Be Togetherはひたすら軽い歌声がきわきら流れていくというメリハリ・ゼロの曲でありまして、ロス・スタイルの完成型といってもいい。


ここでお暇な方はYou Tubeからの資料映像をご覧ください。僕のいっているダイアナ・ロスの「首ノリ」はこのReflection をみればお分かりいただきます。このノリが本当にオリジナルなんですよ、これが、ええ。


初期の典型的なスタイルがこのCome See About Me 。この若さにもかかわらず(1964年のことだからわずか20歳)、チョー自然でリラックスした歌声とノリであります。


ロス氏のタイム感というかリズムの黒いキレのよさは、モータウンもののステージ でのテンプテーションズとの絡みを見るとよく分かります。このテンプテーションズとシュープリームスのコラボ、ホントに美味しいんですよね、これが。


1曲目の見ものはテンプテーションズとロス氏のステップの凄さ。テンプテーションズのいつものライン・ステップに入っていくロス氏のガーリーな横ステップはすばらしいものがあります。これぞ天然モノのノリ。イイね!2曲目のRespectでございますが、テンプテーションズのイイ声、および後衛をつとめる4人の2種類のステップのカッコよさ、これだけで痺れますが、途中でダイアナ・ロスとシュープリームスがサイドステップを踏みながら入ってくるところ、これ、もう最高、いえ、ホント、マジで!このときのロス氏は氏としてはややパンチの効いたストロークでイイね!の真っ黒なデュエットとなります。


ロス・スタイルの本質を一言でいうと「キュート!」、これに尽きますね、ええ。この人は「かわいらしい」ということはどういうことかをヴォーカルによって突き詰めて表現する人でありまして、その究極がStop in the Name of Loveの:

Baby, baby, I am aware of where you go

Each time you leave my door~

door~♪の部分。これが可愛いということの本質的・凝縮的な表現の極み!ぜひCDでこの部分を集中してお聴きください。


で、この人は年をとってもわりと変わらないタイプでありまして、ときはずっと流れて1991年のステージ を見ても、可愛さの基本部分は失われてないのが凄い。タイプで言うと阿木耀子が近い。ただこの年になると、歌はすばらしいといえばすばらしいが、シュープリームス時代のEach time you leave my door~♪的な歌いまわしのキュート・マジックや首ノリはほとんど失われているのが残念。スタンダード歌手的な歌いまわしとノリになっている。ただ、チョー若いころからロス氏はスタンダード・ナンバーの歌いこなしも完璧で、どっちかというとそういう曲を歌うのがスキな人のような気がしますが。


で、さらに2000年のステージ 。これは40歳ほど年下のはずのマライア・キャリーとの競演ですが、この歳になってもあまり変わっていません。マライア・キャリーのほうが擦れたオバサンに見えます。


ダイアナ・ロス。1944年3月22日デトロイト生まれ。Viva, Diva, Diana!!