ディープ・パープルといえば「マシン・ヘッド」(1972)。このアルバムはへヴィーメタルの創始とかいう文脈で名盤扱いされておりまして、MAM(中年)諸君は「昔聞いたよねー」みたいな懐メロ扱いされがちでありますが、MAMになってからこそじっくり聴くべき再評価の偉大な一枚であります。


Deep Purple
Machine Head

で、なにがバラシース!かというとイアン・ペイスのドラミング。これはまったく、掛け値なしにイイね!です、ええ、これが、マジで、これホント!!


リッチー・ブラックモアのギターは、確かに例のストラト・サウンドは素晴らしいのですが、どうにも気まぐれというか、不器用というか、調子が出てきたときは鳥肌立ちまくりなのですが、もうちょっと何とかならないか?という気もします。イアン・ギランは、若者の頃これを聞いたときはあまり好きになれないというか、ヒジョーにクセのある声と歌いまわしでありますが、あらためてMAMになってみると、実はわりとあっさりとしていて、しみじみとした芸風のワビサビ(ポール・ロジャースがむしろ近い)が魅力であります。


この2人とサポートするスリー・リズムとのブレンド具合が大変に素晴らしいものでありまして、ロジャー・グローバーとジョン・ロードは、いわゆるつぼを押さえた手堅いバッキングなのですが、ペイスはスゴイよ!


映像で叩いているところをみるとけっこう野獣系で何にも考えていなさそう。「ドラマーのための音楽用語辞典」では次のように紹介されています。

イアンペイス

左とん平の別人格。
なぜかドラム演奏を得意とする。
背が低いので、いついかなるときも
ロンドンブーツを使用する。


ちょっと聴きでは、ごくフツーのオカズを絡めたハードロックのドラミングなのですが、実は深いんですね、これが。


まず、音がすさまじくイイ。それにフレーズが細かいところまでじつに凝っていて、それでいてストレートに興奮を喚起するという「繊細にして大胆」なもの。ようするにシンコペーションでありまして、シンコペーションによるアップビートのおいしさをとことんまで追求したもの。シンコペーションとは何か?完全な回答がここに!


というように、いろいろと美点はありまくりやがるのですが、なによりも音のタイトさなんですね。タイトだぞー!マシン・ヘッド」ではありませんが、Strange Kind of WomanやWoman from Tokyoなどのポップ系の曲はペイス先生のタイトなドラスムを楽しむためにあるといっても過言ではない。


このブログでも繰り返し主張しまくっているように、Space Truckin'(ところで、これはどういう意味なの?)のイントロのタイトさは尋常一様ではありませんし、Lazyの例のハイハットがだんだんと開いて加速していくところ、これなんか倒れそうに鳥肌立ちまくり!


「マシン・ヘッド」は71年にモントルーで録音されております。このときの5人の写真を見ると、みんな知的なイギリス人の顔をしている。かなり本気で音楽を創っていたんだな、という顔つきであります。とくにペイスはイイ顔をしていますね。


先のオーディオ選びにしても、イアン・ペイスのタイトなドラムが堪能できるかどうかが最重要な基準になっています。