先日の午後、アパレル企業のワールドの寺井社長とゆっくり意見交換をする機会がありました。ワールドといえばちょっと前に寺井さんご自身のMBOによる上場廃止のニュースを覚えている方も多いのでは。


僕は以前から、現在の株式の公開を通じた企業の資金調達に懐疑的でして、いろんなところでちらほらとそうした主張をしていたところ、旧知の寺井さんが経営するワールドが上場廃止に踏み切ったというニュースに接し、かなり興奮したんですね、ええ。すぐに彼にメイルしました。


詳しい話は省略しますが、ようするに、上場することのメリットはタダひとつ(もちろん、資金が薄く広く調達できるということ)であるのに対して、デメリットのリストは果てしなく長いのでは、というのが僕の意見です。ひとつだけ本質的なポイントを挙げるとしたら、経営者と投資家の時間志向の非対称性です。経営者は当然長期のことを考えて行動する必要があるのですが、投資家は買った次の瞬間に株式を売ることができ、しかも一義的な目的はキャピタルゲインを得ることですから、会社の長期的な将来は、ありていに言えば、どうでもいいことなわけです。当然のことながら、投資家の行動は四半期ベースの短期的なものになります。


このことが本当の意味で強い企業を構築する上で深刻な制約になるのは自然な成り行きでありまして、ですから「よっぽどの強い(資金調達上の)理由がなければ、上場しない方がいい」、「しないですむならそれに越したことはない」というのが僕の主張です。


寺井さんは僕が以前から大リスペクトするきわめて優れた経営者(とにかく考えの本筋がロジカルで、そのロジックが太い・長い・ぶれない)でして、この日も上場廃止の決断に至った思考の過程や、その後の反応、これからの企業経営とガバナンスがどうあるべきなのか、濃ゆーい議論をすることができました。イイね!