再生の町 | 物質の下僕

物質の下僕

語りえぬものには、沈黙しなければならない












let me have my enemies butchered

5回シリーズのドラマ

NHK総合TV

たまたま前の回を見て、今日の最終回を見たくなった。

最近はめったにドラマを見ないのだが、岸部一徳、近藤正臣、吉田栄作、と馴染みの顔がそれぞれに歳を経ていたのに惹かれたのもある。

リアリティのある地味な題材。

財政破綻に瀕している架空の町。

役所の財政課長と財政再建のプロジェクトチーム。

前市長の死を受けて担がれた世襲の若い市長。

町を牛耳っている古参の議員(土建業で成り上がりはお約束(笑))。

チームの一員の新参の青年はかつて父親が市の財政課長を務めていた。その父は今日の財政破綻を予見して当時から持ち上がっていたニュータウン計画を凍結しようとして、部下の裏切りではたせず無念のうちに死ぬ。

その裏切った部下が今の財政課長である。

ニュータウン計画で巨利を得ようとしているのが国会議員との強いつながりを持ち、利益誘導を行ってきた古参議員である。

当初、プロジェクトチームはニュータウン計画を前提としてあらゆる分野でのコストカットを行おうとする。しかしその過程で市民生活の現場に触れてニュータウン計画に疑問を抱き始める。

出した結論はニュータウン計画の凍結。

古参議員は巻き返しをはかる。市の職員を恫喝し、離反しようとする市長に圧力をかける。

前市長は彼を通じて企業から不正な金を受け取っていた。それをネタに市長を揺さぶる。

最後の決戦が市民参加の公開討議の場で行われる。

その場で市長は自分の父親の収賄の罪を告白し、同時にプロジェクトチームの再建案への支持を表明し市民へ協力を要請する。

その後古参議員は受託収賄罪で逮捕され、議会では再建案が承認される。

現実の地方政治はこんなにハッピーに終らないだろうし、皆が自分の思惑で保身に走るだろうからずっと醜い様相を呈するだろう。

印象に残ったのは公開討議の終った公民館で、市長と二人になった古参議員のセリフである。

「自分は何でも政府の言うことを聞いてきた。だが踊らされていたんじゃない。それが町のためになると信じていた。自分は生まれ育ったこの町が好きなんだ。」

私がいつも批判する地方政治の腐った政治家や役人、それを支える有権者も「自分たちは町のためによかれと思ってやっている」のだろうか。

よかれと思うことが本当に良いことなのかどうか、誰にとって良いことなのかという判断ができない愚鈍。

己の行いの対価を際限なく過大評価する強欲。

私がこう信ずるに足る証拠は日本全国にいくらでもあろう。