食品加工の現場で食品に殺虫剤が混入する状況とはどんな状況だろう。
例えばカネミ油症事件では製造設備の熱媒体として使用されていたPCBが混入している。
森永ヒ素ミルク事件では添加物の中にヒ素が不純物として含まれていた。
前者の例ではPCBの存在を製造現場の人間は直接に知らなかったか、またはその毒性についての知識はなかったかもしれない。
後者ではヒ素の含まれていた添加物は他から買い入れた原料であり、その製造工程に直接の責任はなくヒ素の存在は想定外であったかもしれない(実際の事件の詳細では想定しうる立場にあったようだが)。
では今回の殺虫剤はどうであろうか。
専門家でなくとも、一般的常識として殺虫剤が食品に混入していいとは考えないだろう。
つまり、漠然とではあってもその危険性は認識されていたと想定しうる。
では、それが食品製造現場で容易に混入するような場所にどうして置かれていたのか。
報道による情報ではその殺虫剤がどういう形状で、どのような状況で持ち込まれたかまったくわからないが、殺虫剤が必要とされる状況があったと想定してみる。
殺虫されるべき対象がその製造現場に存在していたということになりはしないか。
それがハエだったのかゴキブリだったのかまたは別の虫だったのか、知るところではないが、そういう環境だったのではないか。
30~40年前の日本を想像してみればいい。そういうことなのである。
生産コストが低廉であるということの代償はこういう環境にも現れるのである。