22日、1人の伝説的なアスリートが引退を表明しました。
モロッコのヒシャム・エル=ゲルージ。
1500mの世界記録を持つ陸上選手です。
10年前のアトランタ五輪の1500mでは、
22歳の若さで優勝候補だったのが、
アルジェリアのヌレディーン・モルセリと接触して転倒。
モルセリが金メダルを取ったのに対して、
エル=ゲルージは最下位でフィニッシュする悲劇を経験します。
それをバネにして、
97年と99年の世界選手権で連覇。
ただ、今度は大本命として迎えたシドニー五輪でも、
金メダルを取り逃します。(ちょっと笑える変換ミスが出ました)
速すぎるペースで走る作戦ミスで、
ケニアのノア・ンゲニに最後に抜かれてしまったのです。
エル=ゲルージは、アトランタでの屈辱以来、
1回しか負けを経験していませんでした。
2度目の落胆を乗り越えて、01年、03年と、
エル=ゲルージは世界選手権での連覇を続けます。
4連覇は、中距離選手では前人未到の快挙でした。
エル=ゲルージにとって最後のチャンスと思われたアテネ五輪。
前回優勝したンゲニがなんとケニアの国内予選落ちします。
代わりに同じケニアのバーナード・ラガトが
エル=ゲルージと壮絶なデッドヒートを演じました。
先頭を走るエル=ゲルージを、最後の直線でラガトが抜いて、
エル=ゲルージがまた金を逃したかのように見えました。
しかし、本当に最後の力でラガトを抜き返し、
3回目の挑戦でやっとの金メダルを取ったのです。
そのたった4日後、
エル=ゲルージは世界選手権でも1回しか走った事の無い、
5000mに挑戦しました。
本命は世界記録を破ったばかりの、ケニアのケネニサ・ベケレ。
長距離専門のベケレにラストスパートでスピード勝ちして、
エル=ゲルージは1500と5000の二冠を達成しました。
これは、80年前、フィンランドのパーヴォ・ヌルミ以来。
8年間トップに君臨した実力で陸上の歴史に名を刻み、
モロッコでは国民的英雄になったエル=ゲルージは、
UNICEFなどへの貢献でも知られるスポーツマンの鑑です。
引退後も、色々な形で、
世界への贈り物を続けてくれる事と思います。
(写真はBBCより)